第18章 縁の時間
『……仕事じゃなくて…私情で、尾行してただけです』
「私情で尾行…?……え、尾行してたの!!?」
コク、と頷きながらも段々と冷えてきた身体を温めるようにタオルを羽織る。
「今日は横浜の降水確率九十パーセントだぞ…?」
『…学校が東京の方なので、無くてもいいかなって』
「あー、なるほどな。…えらく寒そうだが、どうする?下に来たら温かい飲み物くらいなら…」
『!い、いいです流石にそこまでしていただかなくても…本当、ご迷惑をおかけしてすみませんでし……っ?あ、あの…?』
謝ろうとしたのに、何故だか目の前にいた人が私の両腕を掴んで離さなくなる。
それに何だか怖くなったものの、お世話になった人達に下手な事は出来ない。
「それなら手っ取り早く身体あっためる方法があるんだよなあ…おい、飲ませてやれ」
「飲ませてやれって…!お前絶対酔ってんだろ!!?馬鹿か!!」
「いいじゃねえか、少しくらい。それにこんなに寒がってんだぞ?こんな可愛い子がさ…」
ピク、と何だか嫌なものを感じ取って身体が強ばった。
身体も怠いし、そもそもこの人妙に力強いし…言っても良くしてくれようとしてるだけだし。
こういう時、だいたいは中也や立原なんかがどうにかしてくれていたから、自分じゃどう対処すればいいのか分からない。
「中学生相手に酒飲ませるってお前…いや、確かに可愛らしいとは思うがな……?」
いけない、この声はダメなやつだ。
目の色が段々変わるやつ…目的が段々、変わるやつ。
『や…あの、お酒は……ッ』
「…飲んだら暖まるからさ、ほら!」
『ん…ッ!?ぁ…っ』
口に指を入れられて、そのまま缶の中に入っていたお酒が私の口に注がれる。
飲まないように抵抗するも、一気に注ぎ込まれたそれは私の喉を伝って溢れ出し、更には男の人が指を引き抜いて口を閉じさせるからもうどうしようもない。
けど、ダメだ。
お酒なんか飲んだら私、何しでかすか分からない。
『ん……ッ』
「…まだ飲まないの?だったら俺がチューしちゃうぞ~」
『んん!!?…ッ、の、んだ!!飲みました、からそれは…ッ……ぁ…』
クラリと身体から力が抜けて、頭がぼうっとし始める。
一気にこんな量、飲んだことないよ私…
中也がいてくれたらなぁ…
「おい、完全に意識飛んでんぞ。やっぱり拙かったんじゃ…?」
『…中也…?』