第18章 縁の時間
次に二人が入ったのは…また喫茶店。
え、待って、さっきも入ってたんじゃないの?
なんでわざわざ別の喫茶店にまた入ってるの?
頭の中がこんがらがりすぎてへなへなとその場に座り込む。
制服が濡れるとかそんなこと知らない。
もうとっくに手遅れだもの、傘なんてもの持ってきてないし…
チラリとスコープを覗くと、やはり笑っている二人。
また胸がチクリといたんだ気がした。
……今傘なんか、もうどうでもいい。
あれはお仕事…?お仕事なの?
だったらいったい何のお仕事なのよ…
ため息と共にスコープから手を離して、蹲るように時間が過ぎるのを待つ。
だって喫茶店で飲み物もデザートも注文してるんだもの、あんなの時間がかかるだなんて分かりきってる事だし。
見てても真相は分からないし、嫌な気分になるだけだし。
膝に顔を埋めていればいっそう雨脚が強くなったような気がする。
…調子に乗って甘えすぎたバチが当たったのかなぁ……そうだよね絶対。
「ははっ、お前流石に昼休憩に酒は拙いだろ」
「ちょっと飲んだくれえで酔わねえよ俺は…って雨強くなってんな、今日はやっぱり中じゃねえとゆっくりは出来な……ん?」
「どうし……あ?…おいお嬢ちゃん、そんな所で何を……って、白石蝶ちゃんじゃねえのあの子?」
「は、本物?いや、でもなんで平日の昼前にこんな所に白石蝶がいるんだよ?」
雨音のせいで上手く聞き取れはしないが、誰かがここへ来たらしい。
場所を変えるか、と思いつつ立ち上がろうとすれば、肩に手を置かれて待て待て待て、と止められる。
「おい、嬢ちゃん白石蝶ちゃんだろ。そんな濡れきった状態で見過ごせねえからとりあえず中入れ!風邪ひくぞ」
『…いいです。気にしな……!?』
「いいからせめて屋根の下に来いって、タオル持ってくるから!」
腕を引かれて何故だか親切にしてくれるサラリーマン二名に困惑する。
あ、そうか、ここのビルはオフィスだったんだ。
だから休憩中の人が屋上に来るだなんてことは起こりうるわけで…
少し怠い身体を引かれてなんとか屋根の下に入れば、本当に片方の人がタオルを持って来て下さった。
なんていい人だ…
『あ、の…ありがとう、ございます……』
「いやいや、こんな女のコが雨降ってんのに外でいたら普通こうなるだろ…武装探偵社の仕事でか?傘はどうしたんだよ」