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第18章 縁の時間


雑貨屋さんの様子が見える位置…向かいの建物の屋上から、スコープを用いて様子を伺う。
中ではなにやら女性向けのものを二人で見ながら、指を指して見てみたり談笑したり、手に取って見てみたり…

『……私とは行く事なかったくせに』

ポツリ、小さく呟いた。
雑貨屋さん…なんて、中也は私に内緒で勝手に赴いて、私の知らない内に何かプレゼントを用意してくる。

勿論嬉しいのは嬉しいのだけれど、いざ別の女性と雑貨屋さんに入っているのを目にすると…どうも胸がチクチクする。

私と一緒に選ぶ事はした事ないのに。
それもソラさんと二人きりでなんて、傍から見たらどう見たってデートじゃない。

……手袋外してはないみたいだけど。

だけど、こんな状況だ…私としては珍しい。
まさかこんな感情が湧き上がってくるだなんて…思春期だからだろうか。

それとも、それほどまでに惚れ込んでしまっているからなのだろうか。

『…普通に……むかつく』

パキ、とスコープにヒビが入ったところで中也が何かの気配を察知したのか、当たりを一瞬見渡した。
ああいけない、気配はちゃんと消していなくちゃ、相手はそのへん敏感なんだから。

____なんで私がこんなにこそこそしてるんだろ。

もしかして私が知らなかっただけで、普段からこういう事はよくあった?
私に言ってなかっただけで…そうだよね、だって相手の人は大人だもの。

私みたいなのとは違ってちゃんとした大人の女性で…

違う違う、買い物してるだけかもしれないでしょあれは。
浮気とかそういうんじゃないはずで…

『……ッ…』

しかし、見れば見るほど嬉しそうに緩んでいる中也の表情。
俗に言う、私の思うずるい顔。

なんであの笑顔を他の人にも見せてるの?
なんで、その顔を他の女の人に向けてしているの?

少しぼうっとしていれば中也はソラさんと店から出てきて、そのまま別の場所へと移動を始める。
手には何か紙袋を持っていて、機嫌は頗る良さそうだ。

……もうやめよっかな、やっぱりちゃんと学校に戻った方がいい。
でも、気になって気になって仕方ない。

あの表情を他の人に向けるようなこと、普段からあっていいはずがない。

ポツ、ポツ、と降り出した雨に臆することなく立ち上がり、中也の後を再び付け始めた。

乱歩さんの忠告は、もう私の中では曖昧なものになっていた。
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