第18章 縁の時間
「ん~…でも、この子さあ……?」
「俺もそうは思うが、とりあこの依頼は却下だ却下。…それにこの相手は……」
『?どうされたんです…?』
朝、事務所に顔を出すと珍しく太宰さんも出勤しており、国木田さんと二人で頭を悩ませている様子だった。
「あ?…ああ、そうか白石ももう電車で通学する必要が無いから少し時間があるんだったな……いや、新しく入ってきた依頼が人探しでな」
国木田さんの溜息に私も苦笑いになる。
『あ~…ちょこちょこいますよね、普通の依頼してくる人……ちなみに詳細はどんな内容なんですか?』
「……それが差出人が不明でな。依頼をするつもりがあるのかどうかも怪しいところだが…まあ白石は気にしなくていい、よくある事だ。それに小娘探しなど、まずは軍警や一般探偵の仕事だからな」
「国木田君本当堅いよね〜?…まあ私もあまりこの件に関してはいいもののような気がしないし、依頼主が訪ねて来れば丁重にお断りしておくよ。蝶ちゃんは気にせず私と一緒に心中を____」
『行ってきますね~国木田さん』
「辛辣!!!でもそんなところが可愛『じゃあね太宰さん』……え…国木田君聞いた!!?蝶ちゃんが私に塩対応しながら挨拶するなんて事天地が震撼するほどの非常事態で_」
バタン、と作った扉を思いっきり閉めた。
全く、調子のいい人だ。
国木田さんの言った通りもう能力をわざわざ隠す必要もない上に皆の前で見せてしまった私は、すぐ目の前にある自分の席につく。
しかしそこで、もう何回かは見ているはずなのに固まる皆。
「し、白石さんおはよう…!」
「何回見ても便利そうだよなその能力…つうかまさか太宰さんって日頃からあんな調子なのか?」
『おはよう……ううん、今日は定時出勤してきてるだけまだまともな方。しかもさっきの様子からして今日は普通に歩いてきてたみたいだし、本当に気持ち悪いくらいにまともな方』
「「「普段何してんだよあの人は…!!!」」」
別のビルから降ってきたりとかドラム缶にはまってたりだとか川から流れてきたりだとかだけど。
しれっと言えばやはり教室中に衝撃が走った。
「…なんつうか、苦労してんだな探偵社も」
「国木田さん…太宰さんに苦労してるんだね」
『国木田さんもだけど中也なんか相手にしたら嫌がらせのオンパレードだから』
「「「中原さんが嫌うわけだわ」」」