第17章 ０

｢！白石さんの意思じゃ、ない…？｣

｢…蝶が監禁されてたのは知ってんだろ？そこの胸糞悪いトップは何せ資金を必要としていてな…そこまでこいつを利用しようと考える発想にも頭に来る｣

｢資金…利用ってまさか…！？｣

担任の声にああ、と声をまた低くする。

｢蝶は無理矢理働かされてたんだよ…どんな手を使ってやがったのかは流石に言えねえが、まあ……見ての通り蝶は無駄な血は流したくはないような奴だ。状況にもよるだろうが、こいつ自身が納得していない殺しは絶対にしねえ…そんな奴だ｣

｢それは見ていれば…まあ……｣

｢……そういうわけで、あんまりこいつの前で思い出させるような事は聞かせたくなかったんだよ。さっきの野郎も蝶に任せていようとは思ったが、口にしかけちまったからつい足が出ちまった…ただでさえ色々溜め込みやすいからなあこいつ｣

最近は以前に比べりゃ何倍もマシだが、と付け足すとまたもや目を見開いて驚かれる。

そして潮田は何故だかそれから目を伏せて、申し訳なさそうな顔で言った。

｢………その、ごめんなさい。…今日、母さんが言ってたこと…白石さんなら、聞こえてたかも…｣

｢ああ、バッチリ聞こえてたな。だが手前が謝る必要はねえよ、蝶は別に怒ってねえし…それに俺も怒るつもりは毛頭ねえ｣

｢！！そんな、でも…っ｣

｢そう思われんのは、言い方はあれだが仕方がない当然の事なんだ…少し大人になれば諦めもつく。それに潮田は庇ってくれてたろうが？寧ろありがてえくらいだ……あと俺がめいいっぱい甘やかす口実も作れるしな｣

｢………中原さんは、親御さんは？｣

担任の声にﾋﾟｸ､と思わず反応する。
正直、俺自身は蝶もいるしもういい大人だし…気にしていた記憶はそこまで鮮明なわけではない。

しかし、ただ一つ言えるのは、今の幸せが結果論であるにすぎないということだ。

｢俺は…まあ、普通に育ってりゃこの能力を活かして探偵社にでも入ってたかもな？まあ俺の性格上有り得ねえが、両親っつうのがいればマフィアは勧めねえだろ…俺の場合はまあ、単純な話だ。が、蝶はそんなもんじゃねえ｣

隣で眠る少女の髪にそっと触れる。

｢こいつはただ親から離されただとか、親に捨てられただとか嫌われてたとかそんな次元の人生歩んできてねえんだ…そこんところだけ、何かあったら気にかけてやってくれるとありがたい｣