第17章 0
呆然とする私の元にやって来る渚君……と、殺せんせー。
「お二人の姿が見えましたので、先生は烏丸先生に色々と手配していただいていました…っと、ひもそろそろ消さなければ危ないですね」
「!おい担任、待『きゃ…ッ』蝶!!」
「!?どうされました白石さん!!?」
フッ、と一息で消された炎。
確かにそれは最善策…なのだが、私からしてみると最悪な状況。
せめてもう少し月が明るければ…三日月でなく、満月なら。
中也さんにしがみついて顔を隠して蹲る。
だめだ、炎の明かりがある状態に慣れてたから…
「し、白石さん!?…殺せんせー何したの!?」
「ああ違うんだ、確かに原因はそこなんだがそうじゃ『やっ…、中也さん動いてっちゃ…』あーよしよし、動かねえ動かねえ。怖がんな、付いててやっから」
「ええ!?先生白石さん泣かせました!!?すみま「だああっ、違うっつの!!!蝶が暗所恐怖症に輪をかけて暗ぇのが苦手なだけだ!!謝んな一々!!!」え…!!?そうだったんですか!!?」
反応の大きい殺せんせーと、驚きに口が閉じなくなる渚君。
少し涙ぐんでいると中也がまたこちらに向き直り、腰を下ろしてよしよしと撫でて抱きしめる。
「大丈夫、俺はいる。どこにも行かずにちゃんといる…背中、乗るか?それか『……前がいい』…了解」
ドクンドクンと脈打つ動悸。
中也の首元に恐る恐る腕を回すと力強くまた抱きしめられ、そのまま宙へ持ち上げられた。
『…中也のにおいする……』
「あんま嗅ぐな…あとそれならもう少し落ち着け。まだ息切れてんぞ、ゆっくり呼吸しろ」
言われるように深呼吸を意識するとまた頭を撫でられる。
何回か繰り返しているうちに段々と落ち着いてきて、それと一緒に眠気のようなものが襲ってきた。
安心感って恐ろしい。
『ん………ちゅうしたい…』
「「!!!?」」
「…どのキス?」
『…おまかせ』
言った時点で、求めてるものは決まっている。
直接言いはしなかったけれど、こういう時は中也は意地悪しないから。
ちゃんと分かってくれてるだろうから。
期待通りに重ねられる唇は長くそのまま触れ合っていて、私を優しさで包み込むように慈しんで離さなかった。
あったかい…
「……眠いか」
『…ちょっとだけ』
「それならいい…家着いたらまた起こしてやるよ、安心して寝ろ」
『…うん』