第17章 0
「え…は!?そこ怒るような所じゃ『悪いけど今私早く中也さんと帰りたいのよね、お願いだから早くどこか行ってくれない?』だったら勝手に帰れって!!」
『貴方が渚君のお母さんに手出ししようとするからじゃない』
「そりゃあ生かしておいたら何すっか分からねえだろうがこの女!?」
相変わらず鞭を離さない相手。
別に渚君のお母さんに思い入れがあるわけでも肩入れしているわけでもない。
ただ、渚君にはお世話になっているから。
お仕事上、多分ここは“こう動かないといけないところ”だから。
人に冷めるのも無関心になるのも、見限るのが早くなってしまったものだ。
『…私、その人守るのも多分お仕事のうちだから見過ごせな___…!』
今度は相手からの反撃がきた。
小手調べ程度にわざと受けた…相手も本気で当てに来てはいなかったから。
結果、普通に生活していて切れることはない私のゴムが音を立ててはち切れる。
それに油断をしたのか、少しにやりと口角を上げるその人。
「へえ、武装探偵社っつっても意外と大したことなさそうだなぁ?こんな攻撃も避けられねえで何が…っ?…待て……お前…」
が、何故だか再び怖気付いたような声色に変わり、たらりと冷や汗を流し始めた。
相手の鞭が当たったのは私の髪を束ねるゴムだったのだ…それが切れて、髪がフワリと下に降りる。
『…ふうん?……よかったねお兄さん…これでもし私が今頭にゴム以外のもの付けてたら、お兄さん多分ここで殺されてたよ?…私に』
「蝶、少し落ち着……!潮田、母親連れて離れてろ!!」
「は、はい!!」
とおざかる渚君をよそに、殺気ばかりが募る。
ただでさえ中也に結んでもらった髪なのに。
自分以外に解いていい人なんか中也以外に有り得ない。
目を鋭くさせると、相手は少し震えながらも鞭をギュ、と持って構える。
「お前…っ、し、知ってるぞ!!?……イタリアで見たことある!!白石蝶が、そうだったのか!!!…っ、ぜ____ッガ…っ………」
『!!…へ?』
今にも真剣勝負が始まりそうというそんな時。
相手の男がその場で膝から崩れ落ち、意識を失った。
犯人は…その場から私の元に瞬時にやって来て頭にポン、と手を置く、私の大好きな人だった。
「………ほら、とっとと帰んぞ。デザートはまだまだ残ってんだ」
『え…は、はい…?』