第17章 0
唐突に甘いものを作ると言い始めた中也は私の体を担ぎ上げて立ち上がる。
『きゃ…っ!!?ち、中也さん!?何して…』
「調理室使う許可もらいに担任の所に行くんだよ」
『い、今じゃなくても「今だ」…っ、ならせめて家でいいじゃない!?』
「……じゃあ家に頼むわ。 三時はもう過ぎちまったから五時のおやつくれえになりそうだがな」
引く気配のない中也に従って、学校に迷惑かけずにすむのなら、と近くに持ってきて置いていた自分の荷物と一緒に、能力で家に帰る。
しかし家に着いても靴を脱ぐ気配すら見せない中也。
流石におかしいだろ、これは。
『ち、中也さん…?』
「………今日は手の凝ったもん作るか、久しぶりに。楽しみにしとけ、絶対美味いもん作るから」
『い、いやそんな手間暇かかるの作らなくても…』
「そんじょそこらの親よかよっぽど愛情込めて育ててやんだよ、あんだけ嫌な性格の奴見たら逆にお前に愛情注げるわ。あと髪とか目とか、気にすんなよ。大概のもんはお前の見た目を羨ましがって妬んで言ってるだけだから」
中也にぽんぽん、と頭を撫でられてまた目を丸くした。
恥ずかしい台詞ばっかり言ってるはずなのに、それでも驚きの方が大きかった。
中也も気付いてたんだ、あの人が私の事を素直に褒めているわけではなかったのだと。
それだけじゃない、私の見た目に関して言う人達のことをそう言われたのは初めてだ。
『…妬む要素ある?普通に気持ち「気持ち悪くねえよ、綺麗なだけだ。……デザート出来るまでゆっくりしとけ」!い、いや、だからそんなに気使わなくてもい……ッ!?』
中也の声に一瞬何も言えなくなったのだが、すぐに我に返って大丈夫だと伝えようとした。
そこまでしなくても私は何ともないんだよと。
だけど、中也は私を担いだまま…何かと思えば寝室に運び込み、そのままベッドの上に押し倒す。
なんでこの人は…
「気なんか使ってねえよ……黙って甘やかされてろお前は」
『ひ…ッ、そこで喋らな……っ…わ、わざわざそんな凄いの作らなくてもまたでいいって言っ……!?な、何して…』
私の両手を片手で容易くまとめたまま、中也は以前私に使ったことのある麻縄を手に取り、それを私の手首に巻き付けた。
どうしよう、嫌な予感がする。
嫌な…なのにたったこれだけの事でなにか期待してしまうような。