第17章 0
「帰るわよ、渚!!!」
「『っ!?』」
放課後、訓練を延長して二人でまだ実戦訓練を続けていた私と中也は、女性の大きな叫び声…というか、怒鳴り声でピタリとお互いの攻撃を止める。
中也は拳を、私は脚を。
『渚君!?今渚君って…?……!あ、渚君のお母さん!?』
私と中也の近くに出てきた渚君のお母さんと思わしき女性…と、手を引かれて出てくる渚君。
そうか、三者面談するって言ってたっけ。
「!なあに、貴女?」
「し、白石さんまだ動いてたの!?」
「白石?……!そう、貴女が白石蝶ちゃんね…E組に在籍しながら学年首位の転校生…おまけに容姿端麗で可愛らしくて、武装探偵社でお仕事してるって」
『へ!?わ、私…ですか!!?』
にこにこと笑顔を浮かべて私の方に来る渚君のお母さん。
思わず話しかけられて焦れば、渚君のお母さんが腰を屈めて私を見つめた。
「いったいどこの遺伝子でこんなに可愛らしい子が生まれてくるのかしらねぇ…髪と目は生まれつきなの?綺麗だわ」
『え…あ、は、はい生まれつきで……』
「偉いわねえ!こんな歳でお仕事しながら勉強もって……ってああ、親御さんがいらっしゃらないんですっけ…それでまだE組に?勉強が出来るのにどうしてA組に行かないの?」
『親…はいますよ、一応。…私そんなに出来る人間じゃないですから。それに今の担任の先生が、凄く教え方上手いんです…生活的にちょっと忙しい私に合わせて教えてくれ…るんで…』
つい、言葉が消えかけた。
見たことのある感情を…向けられたことのある感情を感じたから。
「へえ、そうなの…じゃあどうしてうちの渚は……ああ、まあいいわ。またうちの息子の事よろしくね」
乾いた笑みを浮かべるその人に、私の心も酷く冷たくなっていく。
それを隠すように人懐っこい笑みを浮かべてはい!と元気よく返事をすれば、渚君のお母さんは私から離れていった。
「母さん!?白石さんに何を…」
「いいから、早く帰るわよ?……小憎たらしい子ね、あんたの同級生。生まれつきあんな見た目だから親に捨てられでもしたんじゃないの」
「母さん!!」
『…中也さん中也さん、今からどうする?続きする?』
なんにも知らないふりをして中也の方に向き直る。
それから口元を緩めれば、中也が私の前にしゃがんで言った。
「……今日は今から何か作ってやるよ」