第17章 0
『…ふふっ、話が進みすぎよ……はい。…それなら、中也の為にも頑張って進学しなくちゃいけないね』
「……嫌じゃあ、ねえんだよな」
『!…うん、嫌じゃない。嫌な事があったら……その時は中也に助けてって言うよ』
「…成長したもんだ。それでいい……お前俺の事考えすぎなんだよ、だいたい俺のどのあたりがいい奴なんだよ馬鹿、お前の方がよっぽどいい奴でよっぽど綺麗で…………お前がいたから今の俺になってんだってことに早く気づけ、この鈍感」
クシャ、とまた撫でられて、それと一緒に紡がれた言葉にまた幸せになった。
『持ち上げすぎだってば…ねえ、今日さ……久しぶりに中也さんって呼ばせてよ』
「!どうしたよ突然…?」
『……そっちの方が…お、親…みたいだから』
「…喜んで。子供は親に甘えとけ~……呼んでもいいが、そりゃあ担任にちゃんと話をつけてからだな。話し終わったら…仕方ねえから甘えを聞いて今日は呼ばせてやるよ」
『…うん……うんッ!…い、行ってくる!!』
「おう、行ってこい。俺は浅野さんに一応お前の考えが変わったとだけ連絡入れておくから」
中也にありがとう、と笑ってから職員室まで駆け出して行く。
そっか、私が普通なのは中也の普通になってるんだ。
私の“楽しい”は、中也の楽しいにもなってるんだ。
こんな普通が、幸せなんだ。
それならちゃんと勉強しよう。
私の一番苦手な、人間をもっとちゃんと勉強しよう。
私の一番得意な、ニンゲンをもっと突き詰めていこう。
私の嫌いな、中也の好きな、私をちゃんと育てよう。
私の好きな、中也も好きな中也の幸せをもっと幸せにしていこう。
それで今度こそちゃんと立派な大人になって、あんなに素敵な中也に相応しい人間にちゃんとなって…それで、堂々と探偵社員でい続けよう。
堂々と皆と一緒にいよう…堂々と中也の隣にいよう。
堂々と、織田作に恥じない妹として成長していこう。
『こ、殺せんせー!!さっきの話……ッ、やっぱり私っ…中也とちゃんと結婚するよ!!!』
「ニュヤ!!?し、白石さんんん!!?」
「「ブッ!!?」」
咳き込む先生陣。
そこで気付いた。
『あれ?……あ、間違った。椚ヶ丘高校受験する!で、卒業したら結…す、数年武装探偵社に専念して、結婚する!!』
「「「結婚報告か!!!」」」
「あンの馬鹿…っ、クソ可愛いわ…!」