第17章 0
「!蝶、進路相談の方は…」
『え?……ああ、大丈夫。ほら、言っても私探偵社員だし、もう手に職持っちゃってるようなものだから』
教室に戻って中也に早速問われたためにそう言えば、何故だか少しざわめいていた教室が一瞬静まって、皆が一斉に私の元に押し寄せた。
「ち、ちちち蝶ちゃん!!?あんなに頭良いのに、就職!!?」
「高校は!?白石くれえ勉強出来るんならどこにでも…それに何でも出来るんじゃねえのかよ!!?」
『いや、だから別に興味無いからいいかなって。行けたとしても特に勉強したいとも思わないし、私自身元々勉強がそこまで好きなわけじゃないし……それに今くらいある程度の自由度がある仕事の方が合ってると思うしね』
「……浅野さんも以前ああ言ってたろ。それに行っておいて損はねえはずだ、もしかしたらお前も他にもっと興味のある職が見つかるかもしれな『今のが一番いい。それに普通の会社になんて入ったら、ポートマフィアのお手伝いも出来ないじゃない?体裁的にもさ』蝶…?」
目を丸くして私を見る中也の方に顔を向けずに、話題を逸らそうと自然に話を変えていく。
『そういえば朝から騒がしかったみたいだけど何事?』
「あ、ああ…渚がちょっとな」
『!渚君が?』
千葉君の言葉に渚君の方に顔を向けると、苦笑いを返される。
訳を聞いてみると、何やら渚君の母親が、学校への寄付金を持ってE組脱退の交渉をしに行こうとしているらしい。
それで今日、三者面談という形で話を切り出そうとしているらしいのだけれど。
『…でもそれって渚君の意思なの?E組抜けたいって』
「そんなわけないよ……ただ、母さんにはやっぱり逆らえないところも多いし…何より、迷惑しかかけてないっていうのは確かに否定出来ないところだし」
『…』
私の一番苦手な話だ。
親子関係などというものほど私にとって苦手な話は無い。
子供が親に迷惑をかける…客観的に考えれば確かにそうなのだろうけれど。
「潮田、手前そりゃどういう意味だ?迷惑かけてるっつうのは」
『中也…?』
「えっ…いや、やっぱり私立ってだけでもお金はかかりますし、塾とか…家の事とかも。育ててもらってるだけでも苦労とかかけっぱなしで」
「んなもんの何が迷惑なんだよ?まずはその自分の考えから改めろ」
椅子に座ったまま、中也はハッキリと言葉にした。