第17章 0
「何惚けてんだよ、お前が体調悪い上に帰りてえっつってんのに優先しねえわけねえだろ、俺が」
『…いいよ?行ってきて……蝶、ちゃんと大人しく待って「それ」……?』
「一人称名前になる癖………そんくらいちゃんと分かってんぞ、俺も」
知らなかった。
そんな所に癖が出てるなんて。
私、意外とわかり易いんだ?
___分かってくれなかったのに、なんで今更そんな所。
「なんなら帰りに限らず今でもいい。溜めてるもん吐き出して、したい事があれば何でも言え…多分お前が悪い事、ねえからよ」
『………ううん、蝶悪い事ばっかり考えてるの。全然いい子になれてなくて…そ、れで…』
「……とりあえず今、何が苦しい?何が辛い…何が寂しい」
『!!…ちゅ……や…ぁ……ッ、………他の子のとこばっか、行かな…いで…ッ、蝶の事おいてっちゃ……やだよ…ッ』
絞り出すような声はちゃんと届いていたのだろうか。
ふわりと包み込まれて、中也をやっと近くに感じられる。
やっと来てくれた。
やっと蝶の事、見てくれた。
「…悪い……つい、お前賢いし何でも出来ちまうからよ。……そうだな、全然話してもやれなかったよな…」
『見てもくれなかった…構って欲しかった…っ、でも、中也…私の事ばっかり考えてたから言えなくてッ………、皆にお礼してるだけだったから…っ』
「まさかそれでお前……蝶、一つちゃんと教えておいてやる。いい子すぎんのは、いい子じゃねえんだぞ」
中也の言葉にえ?と目を丸くする。
「気回しが効きすぎなんだよ、言ってんだろ?もっとわがままんなっていいって…それにまたこういう内容じゃねえか。お前が俺のこと色々と考えてくれんのは嬉しいけどな……お前がそれで泣いてんのは、俺はすげえ悲しいし辛いし、情けなくなる」
『!!!………女の子と目、合わせすぎ…蝶の事見てくれなさすぎ』
「!…おう。他は」
『………他の子のとこ行き過ぎ。蝶全然話してももらえなかった…それどころか遮られたし。なのに蝶のとこきてくれないし』
「…………ほ、他は……」
『…他の人の前でかっこいいことばっかりしないで。するならせめて私のとこいて…私ちゃんと数えてるんだからね、中也が私から目逸らして他の子と目合わせてるのとか』
「なんだそれ……可愛い」
まさかの返しに困惑した。
ここまでしてて…思ったのがそれ?
頭、おかしいよ