第17章 0
「はい、それで…はい、血吐いてました。そっから立ちくらみか…貧血かで。…………はい。本人は体質で治ってるだろうからって言ってるんすけど、それは別としてやはり心配で…は……?え、いや…それ、ですか?」
首領と電話を始めて少し。
また私のところから少し離れた中也の方に目を向けて…しかし扉がそれを遮って、声だけしか聞き取れない。
動きたい。
もう私元気だよ、さっきはちょっと身体がおかしくなってただけで。
戻ってきてよ、もう悪いこと考えないようにするからさ。
仕返しなんかしないから…いい子でいるから、帰ってきてよ。
なんて思っているとガラ、と音を立てて開く戸。
すると願っても見なかった中也本人がまたこちらに来てくれた…携帯を私に差し出しに。
「首領が聞きてえ事があるらしい。念のため、電話でにはなるが原因だけはっきりさせておこう」
『…そ、うですよね……』
「?喋れるか?しんどかったら無理しなくてもスピーカーにし『だ、大丈夫、!』……そうか…?」
差し出された携帯を手に取ってもしもし、と呟くと、何故か少し真剣そうな声色で首領が私に質問を投げかけ始めた。
「蝶ちゃん、今日お昼ご飯は食べられたかい?」
『?食べましたよ?じゃないと中也がうるさ「いつもの量ちゃんと食べられた?」…あんまりお腹空いてなかったんで、そこまでは』
「ふむ…じゃあ今日、目眩とか立ちくらみとかは多かった?」
『あんまり動いてなかったんでそこは曖昧で…』
「じゃあ最後。今何かすっごい苦しく思ってない?何かで悩んだり…寂しくて思いつめたりしていないかい?」
『え…』
図星だった。
どんな風に、とか誰を思ってとか言われなかったけれど、多分この人はそこまで見透かしているんだろうなと思えてしまうほどに。
気が抜けたようにポツリと零した声に首領も中也も反応する。
それに何かを感じ取ったのか、首領からスピーカーにしてくれと指示が入る。
それからすぐに指示に従えば、首領から思ってもみなかった言葉が紡がれた。
「中原君、そこにいるんだろう?君は一旦別の所に出たまえ……蝶ちゃんには僕が話を聞いておくから」
『……首領…?』
勿論動揺する中也。
「どうしたんだい蝶ちゃん?」
『…………ううん、何でもない。…ただ、なんで中也に…?』
「中原君がいると話しにくいんじゃないかと思ってね」