第17章 0
イリーナ先生との話に区切りがついたあたりで人の気配が近付いてきた。
流石に拙いと思ったのかイリーナ先生も話をやめる。
一応言わないでおいてはくれるらしい。
「あーもう、今日は中原さんいたからいつもより余計ハードに……って蝶ちゃん起きてる!!おはよう!!」
「え、白石起きた!?よく寝てたな〜…まああれか?中原さんの上着着てたからついつい安心して~、みたいな」
『……うん、そうだね。心配かけてごめん、もう大丈夫だよ…ていうか誰か起こしてくれても良かったのに?中也が馬鹿みたいに心配性なだけだから授業前にでもさ?』
心配性なら心配してよ。
こんな心配、望んでない。
もっと見てよ…目、逸らさないでよ。
私がいるのに、他にばっかり行かないで。
私といるのに、遠くにばっかり行かないで。
「蝶!起きてたか、具合はどうだ!?腹が痛かったってお前…____ッッ!!?」
中也の姿を視界に入れたあたりで、突如お腹…よりも少し上の鳩尾あたりを襲った激痛。
それと同時にコプ、と口に血液が逆流し、思わず口を開いて吐血した。
『……ッ?…ッ、??あ、れ…おかし…な……怪我とかしてな……っ?』
フラリと自分の体重が支えられなくなって倒れこもうとすれば、すぐに中也に支えられる。
立ちくらみ…目眩?
どっちでもいいや、中也が来てくれただけでも嬉しいし…
「腹か!?今何が…」
『……大丈夫、どうせすぐ治っちゃってるだろうからさ…………それより床、汚しちゃったから拭かなきゃいけな「保健室行くぞ、とりあえず首領に連絡すっから」…いいって……もう治ってるから。本当にい…』
「黙って安静にしてろお前は!!!何かの病気だったらどうすんだ!!?吐血までして…ッ」
ざわざわし始める周り。
殺せんせーまでもが駆けつけて、床をすぐさまきれいにして見せて気にしなくてもいいから早く横になってくださいと促された。
優しかったような気がする。
けど、あんまりどんな風に言われたかとか、覚えてないや。
私、大人しくしてたらいい?
黙ってたらいい?
今日、ずっと我慢してたよ。
中也と話すのも、中也の話遮るのも、邪魔するのも目合わせるのも…抱きつくのも、手つなぐのも頭撫でてもらうのも。
皆の勉強にもなるしって、中也は私のためにしてくれてるんだからって。
ねえ、いつまでいい子にしてたらいい?