第17章 0
「あー…蝶?」
『カルマ?…どうしたの、またサボり?』
「サボってる蝶に言われる筋合い無いよ………様子見てたんだけどさ、多分あの人相変わらず蝶の事しか考えてないと思うよ?さっきのも蝶に食わせて自分が蝶のやつを食べるんだって意気込んでたし」
うん、分かってる。
分かりやすいもん、あの人私と違って演技とか得意じゃないから。
『…知ってる。ふふ、おかしいよね?中也がいるからわざわざいつもより気合入れて、ちゃんと食べてもらっても大丈夫なように作ったのにさ……そこには全然気付いてくれないんだもの』
「!…ま、まあ作るのも忙しそうだったしね」
『それも知ってる。…全部私がお世話になってるからとか、私が良くしてもらってるからとかっていうあの人なりの礼だって分かってる………分かってるから何も言えない。言っちゃいけない』
「ち…よ……?」
顔を腕で覆って、明るい世界から孤立するような錯覚に陥る。
冷静になれ、私は頭を冷やしにきたんだから。
そうだよ、あの人の行動の理由はたいてい私基準なんだから。
私のために、私にしてくれたお礼のために。
よく分かってる、よく知ってる。
……でもさぁ、ちょっとくらい私にだって構ってくれたっていいじゃない。
今日、何回女の子達と目合わせてた?
何回笑い合って、何回楽しそうに会話して…
____何回私と目、合わせてくれなかった?何回、私と会話してくれなかった?
『…おうち帰るまでの我慢だもん、平気。……カルマもお腹空いたでしょ?戻ろ?』
「いや、俺はさっきサボるためにてきとうに仕上げてきたから昼飯がろくな出来になってな「塩辛!!!?」……ほらね?」
『あはは、塩そんなに使う機会あったっけ今日のメニュー?…じゃあ今日は私のやつ食べる?』
「え、でも中也さんに『いいよ、あの人が作る量なんか私食べきれないし…今日はカルマにあげる。それに私今いつもよりお腹空いてないから』……じゃあ半分こしよう、蝶が作ったやつ。いつも美味しそうだから正直羨ましかったってのはあるし」
無邪気に笑うカルマの提案に一瞬ポカンとした。
半分こ…悪くない。
『羨ましかったなんて大袈裟な…いいよ、それなら食べれそう』
味覚も戻ってきてる事だし。
「うん、じゃあ戻ろっか。殺せんせーには俺特性の親子丼の塩辛でいいでしょ」
『何それっ、塩いらないって!』