第17章 0
「ちょっとちょっと中也さん!?いいの蝶のこと放っておいて!?」
蝶の担任の課した料理は三品だったのだが、日頃の癖でついつい調子に乗ってフルコースでメニューを仕上げようとひたすらに調理を続けている。
そんな中響いてきたのはカルマの声。
カルマが呼ぶのは別に良いのだが、問題はその内容だ。
ピタリと手を止めてそちらを向けば、何故だか少し焦ったように俺の方に目を向けるカルマ。
「蝶がどうした!?」
「え、気付いてなかったの!?あの蝶がサボるって言ってさっき外に…」
その話を聞いて少しの間何も考えられなかったが、視界に映り込んだ美味そうな飯を見て気が付いた。
「サボるって…なんだ、ちゃんと課題終わらせてんじゃねえか。あいつにも遂にちょっと反抗期でも来たのか?サボりくれえ学生の内にはしておくもんだ、つうかサボりになってねえ…おっ、こりゃあいい。絶対ぇ蝶好みの味だこれ」
「あははっ、中原さん相変わらず蝶ちゃんの事ばっかりだ!」
「るっせえな、外野は大人しく自分の課題片付けてろっての。見ろよあいつのやつ、美味そうだろ?しかも開始十分で全部仕上げやがった…ああ、手前ら手ぇだすなよ。あれはあのまま永久保存を___」
「「「いや、食べようよ!!?」」」
本当に見事な出来だ、食うのが持ったいねえくらいには…いや、あれは確か今日の昼飯にするっつう話だから結局食っちまわねえといけねえんだが。
「……!そうか、俺がフルコースであいつをもてなして腹いっぱいにしてやりゃあれを俺が食える」
「ちょっと中原さん!?私いつも白石さんの作ったご飯楽しみにしてるんですからね!!?」
「ああ!?手前なんであいつのやつ食ってんだよ、昼食に弁当作らねえ日だろ今日!!」
「食べきれないからと分けてくださるんですよ!!最初は断っていましたが……あまりの美味しさについ」
涎を垂らしかけながら蝶の作った飯を見つめる担任。
「…………じゃあ俺が手前の分も作ってやるから俺に寄越せ」
「本当ですかああ!!!?」
「……俺はこの授業サボるわ、料理とか苦手だし」
手をひらひら振りながら外に歩いて行くカルマ。
「え、カルマ君は本当のサボりに…って、仕上がってる!?珍し…………ッ塩辛……っ!!!!」
「…あいつよくあれで一人暮らし出来てんな」
今度軽く教えてやるか、蝶が世話になってるし。