第17章 ０

中也の言葉に目を丸くする。

『え…さっきの、じゃなくて……っ？』

「お前が必死な顔してんのは勿論好きだが…まあ、結局お前が嬉しがってる顔してんのには勝てねえんすわ」

例えば…とこちらにｽﾞｲ､と近付いて、そのまま頭をｸｼｬﾘと撫で始める中也。

「……これは恥ずかしい？」

『…ちょっと、だけ……ドキドキする』

「な。…でもお前、もう安心しきった顔してる」

『え…』

思いの外ｽﾄﾝと素直に受け入れられた言葉。

うん、そうだよ。
だって好きだもん、中也に撫でられるの。

中也に優しくされるの。

「ん……もっと撫でてほしそうにしてる」

『！！…ｯ…あ………ず、るい…』

おでこに軽く口付けられて、それに思わず目を逸らす。
かっこいい…それに勝てない。
やっぱり中也は優しい、私の事なんてなんでもお見通しだ…安心する。

こんなふうに、一番大切な人に優しくされるのが。
ちゃんと愛してくれてるって、伝えてもらえるのが。

それが全て、演技でも同情でもなくて本心からのものなのが。

「はは、言ってんだろ。お前が好きなもんは把握してるって」

『…中也、もうちょっと……』

「はいはい…ほら、嬉しくなった。お前すぐ擦り寄ってくるから分かりやすいんだよ」

撫でながら、私を抱きしめてそう呟いた。

そうだよ、大好き。
嬉しいんだもん、中也にこうされるの。

『…………いや…？』

「そう聞き返してくんのも含めて余計可愛い…余計に好き」

『………そ…』

「蝶は？」

『…好き』

「いい子だ………素直んなってる時が一番可愛いんだよなぁお前」

これも好き。
私がいい子って褒められるの好きって知っててそういう風に言う中也が好き。

可愛いって中也に言われるのが実は嬉しいって気付いてて、そうやって言う中也が好き。

『中也…私中也に拾われてよかった』

「！何だよいきなり？」

『……ううん、言いたかっただけ。…中也大好き』

「…………阿呆、んな良いもんじゃなかったろ。よくよく考えてみやがれ、お前は拾われたんじゃなくて攫われたんだよ」

『…じゃ、攫われてよかった？……ふふ、変な感じ…でもやっぱり大好き』

「……お前の親の方の俺に嫉妬しちまいそうだわ」

『！！…えへへ、中也も好き〜♡』

「うおお！？いきなり押し倒……ｯ、だあああもう！！可愛いな本当に！！！」