第17章 0
え、と目を丸くすれば中也はプリンをテーブルに置いて、具体的には?と優しい口調で問う。
それと一緒に腰を屈めて私の顔を覗き込むように目線を合わせられ、嫌でも中也が近くなる。
『ぁ、えと…ッ、そ、その……わ、たしあんまりそういうの、分からな…くて……』
「…分かんねえけど俺が不足してんの?」
『!!………ん、足りてな……ッ、!』
コク、と小さく頷くと中也の手が頬に触れ、そのままそこを優しく撫で始めた。
突然の感覚に戸惑いながらもピクピクと擽ったさに肩が揺れる。
何この感じ…ここ、こんなに執拗に撫でられたことなんかないのに……多分。
「どうして欲しいのかねえ蝶さんは?言ってくれなきゃ俺にも何をすればいいのか分からねえんだが…試しにこうすりゃちっとはマシになるか?」
『ひうッッ!!!?…ッ、ぁ、うッ……!!!』
「っと…え、何今日どうしたお前?流石にこんな事無かったろ今まで…?」
ク、と指を曲げて滑り込ませられ、撫でられてたせいで変にそこに感覚が集中してたせいか、首に指が触れたと同時に腰が抜けてしまった。
床に座り込む前に何とか中也に支えられたのだけれど、それにしても近い。
恥ずかしさに目にぶわっと涙を溜めて困惑する。
『ぁ、あぅ……ッ、ぁ…』
「ってまたなんで泣いてんだよお前は!?どっか打ったか!?痛かったか!!?」
『違ぁ…ッ……近…い……っ』
「はあ!?近いって……お前散々これまでくっついてきておいて今更『し、知らないもん…っ、こ、んな…好き、なの……とか知らな…恥ずかし、くて…』なんで俺に懐いたらそうなんだよお前は…ッ、とりあえずしんどいだろ、ソファー座れソファー」
中也に運ばれてソファーに座ると、中也は座ることなく私の前でしゃがみ込む。
下から覗かれて視線の逃げ場がどこにもない。
恥ずかしいって、言ってるのに…
「……お前マジで男作ったことねえんだな…いや、俺もねえけどどうにも初過ぎねえか…?一応こういう関係になって数ヶ月経ってるはずなんだが」
『…私の、事……全部話したの、初めてなの…全部知って好きって、言われたの初めてだったの…』
「!…全部って……でも俺結構前からお前の身体のことなら…」
そこまで言って気付いたのだろう。
汚くなんかないと、貴方にそう言われて、私がどれだけ嬉しかったか。
どれだけ、救われたか。