第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
中也さんが医務室からいなくなって、ほんのちょっと時間が経ってから椚ヶ丘への扉を作った。
まだドキドキしてるけど、中也さんが行ってこいって言ったんだ。
私が行くと思って医務室を出て行ったんだから、行かないわけにはいかない。
『ホント、ずるいですよ、やり逃げなんて…私が中也さんに逆らえなくなるの分かってるんですか』
もう誰もいない医務室で一人呟いて、扉をゆっくりくぐり抜けた。
『ただいま戻りました!遅くなってすみませ……皆どうしたの?そんなにゲッソリして』
教室に戻ると、空気が物凄く淀んでいた。
そして地面に散乱するBB弾に、窓際に立てかけられている掃除用具。
大方固定砲台に苦労していたとかだろうか。
「あ、おかえり白石さん…多分予想してるのであってると思うよ」
『潮田君…なんかごめん?』
「いやいや、白石さんが謝ることじゃないって!…あと一時間だけ授業残ってるし、それだけお願いしてもいい?」
潮田君からもなんだかお疲れらしいオーラが漂う。
しかしそれと同時に気がついたことが一つ。
『う、うん、勿論いいよ。って、あと授業一時間だけ!?私急いでお弁当食べるね!』
本当に長い間あけてしまっていた。
そうか、一連の騒動に収集をつけるのも、点滴や輸血をするのにも時間がそれぞれ結構かかってたから…
そこまで考えて、気がついた。
いや、これ完全に最後に中也さんに甘えてた時間も長いわ。
それに匹敵するくらいのレベルの時間くっついてたわ。
「あ、今日弁当なんだ?美味しそう、手作り?」
カルマ君はいつもの様子で聞いてくる。
五分で何とかお弁当を食べ終わり、ご馳走様をしてからカルマ君の質問に答える。
『うん、今日からはお弁当作るの』
「おお、食べ終わってから喋るとか律儀だね」
『まあね。なんてったって、今日からのお弁当は、中也さんのと同じお弁当だからさ!あぁ~愛妻弁当美味しく食べてくれてるかなぁ〜!!』
教室の重い雰囲気の中、一人花を咲かせたように喜ぶ。
が、そして思い出す愛しの中也さん。
一旦甘えたいモードに入るととことんまでに中也さんに甘え尽くしたい私は、すぐに花を吹き飛ばして教室の雰囲気に馴染んだ。
『はぁ……中也さん不足、死にそう。帰りたい、生きた心地がしない』
「テンションの差激しくない?」
中也さん症候群と名付けよう。