第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
「んで、蝶さんよ。いつまでこうしているのか聞かせていただいてもいいか?」
『……一生』
「ああ、なんかもう慣れてきた…まあ俺はこうしてても構わねえが、お前学校に戻りたいんだろ?」
中也さんが核心を突いてきたので、更に抱きしめる腕に力を込めた。
『もうちょっと…』
「それもう十二回目な」
『だって、』
中也さんに抱き着いてるのが心地良い。
この暖かさが気持ちいい。
「だってじゃねえだろ?…そろそろ昼だし、俺もお前が作ってくれた弁当、食いに行きてえんだけど」
『!愛妻弁当っ』
「愛妻…まあもういいか。お前が離れてくれねえと、俺は折角楽しみにしてたお前のお手製弁当が食べれなくなる。腹が減る。俺を飢え死にさせる気か?」
食べれなくなるだなんてそれは困る。
『や、やだ!…です、けど』
でも、それはそれで離れるのは嫌だ。
もっと、もっと甘えていたい。
「……仕方ねえな、帰ってきたらまた何でも聞いてやっから。今はとりあえず学校戻れ。お前腹減ってまた倒れたりすんなよ?」
『わ、私そんなんじゃ倒れないです!』
「そうか、そりゃ頑丈な体だ」
からかうように言う中也さんを、名残惜しいが腕を解いて離す。
私の背中を二度優しく撫でてから、彼の温もりが離れる。
「家に帰ってきたらまた会えんだから、そんな顔すんなよ…急いで帰ってきたら、そんだけ後は一緒に居れんだろ?」
『…急いで帰ってきます』
「おう、そうしろ。んじゃ俺は弁当食いに戻るわ」
学校が終わればまた会える事が分かっていても、今の私は中也さんに甘えたいモードに突入しているのだ。
五月病のように病みそうである。
『はーい』
顔を俯かせる。
中也さんが立ち上がるのが分かって、思わず彼が羽織り直した外套をキュ、と掴んだ。
「!蝶、お前…」
『あ、あー…ごめんなさい、お仕事頑張ってくださ……っ、?』
言い切る前に、それは起こった。
“二回目”となるそれに目を瞑り、前よりも少し長く、そこに熱を感じていた。
それが終わると中也さんはまた軽く頭を撫でて、じゃあなと言って出てしまった。
顔も耳も手も足も、全身が熱をもって熱くなっている。
しかし、中也さんの唇が触れたおでこだけは、特別熱を持ったように熱く感じた。
『…っ、頑張れって、言ってるの?』
私を励ますために、キスするの………?