第1章 蝶と白
驚いた顔をした烏間先生から予備の制服を受け取り、教室に戻ると、真っ先に話しかけてきたのは意外にも寺坂君だった。
「おい、白石…」
『…何ですか?汚いものを見せてしまったことなら謝ります。本当にごめんなさい。』
「違ぇよ!…さっきは、悪かった。血、見たら信じるしかねぇよ。」
『さっき……ああ、気にしなくていいのに。それに、どう考えても先に手出した私が悪いし。』
「……そうかよ。」
和解のような形に一応なった私達に声をかけてきたのは、赤羽君。
「ちょっと寺坂?もっと言うことあるでしょ?皆だって黙ってないで、思ってることあるんなら言いなよ。」
『まだ何かあるの?』
この一言で、クラスの皆が私と目を合わせ始める。
何だ、この状況は。
やはり、目に悪いものを入れさせてしまったことだろうか。
しかし、私のそんな予想は覆されることになった。
「怪我、大丈夫!?」
「凄く血が染みてたよね、?」
「今までで勘違いしてて悪かった!」
『…へ、?いやいやいや、どうしたの急に?怪我なんかなら、もう全然平気だし、私何も気にしてないから。ね?』
皆が口々に言うのは、謝罪の言葉。
「それでも、ごめんなさい。…寺坂君との騒動の後、烏間先生とカルマ君に言われて初めて知ったんだ。ボディガードの仕事で、僕達を悪い奴らの目の敵にしないようにって、距離をとろうとしてたんだよね?」
『潮田君…、』
険悪な雰囲気じゃなくなった事には感謝してる。
けど、これは大変な事態だ。距離を縮めてはいけないのに。
とりあえず、話をしたという赤羽君の方を向いて、少しだけ睨みつけた。そうすると彼は笑いながら、
「良かったじゃん!これで心置き無く仕事、出来るんだし?」
『そうじゃなくて!』
「俺達だって、まだまだ未熟だけど、暗殺者なんだよ。それに何かあったとしても、殺せんせーっていう超生物がいるんだ。大丈夫だよ。」
違う、それだけじゃない。暗殺者といっても、人を殺したことなんてない、表の世界で普通に過ごしてきた子達に、あんなの見せて…
「……それに、さっき白石さんはああ言ってたけど、汚くなんかないんだよ?人間、怪我したら誰だって血は流れるんだから。」
『っ!…し、仕方ないから、関わらないって言ったことは前言撤回しますよ。……よろしくお願いします、』