第1章 蝶と白
『…っと、私、授業抜けてきたんでした。また戻りますね。』
二人から返事をもらう前に、椚ヶ丘へと飛ぶ。
「全く…太宰、前の職場でも、あんな無茶をする奴だったのか?白石は。」
「いや、前の職場じゃあ、彼女はあんな無茶出来なかったよ。一回だけ使った事があったのだけれど、それで暫く生死を彷徨った状態に陥ってしまってね?」
こっぴどくお叱りを受けて、心配されて、それから探偵社に来るまではほとんど使っていないんだ。
太宰の言葉に疑問を抱いた国木田が更に問う。
「お叱り…心配?お前のことか?今は言う事を聞いていないように見えるが。」
国木田の発想が余程面白かったのか、太宰は大きく腹を抱えて笑い転げた。
「それが私だったなら、今こんなに苦労をかけられてないよ。それに、そいつと私を一緒にするのはやめてくれ。」
回りくどい言回しをする太宰に段々と苛立ってきたのか、国木田の顔に青筋が浮かぶ。
「わかったわかった、怒らないでくれたまえよ!…彼女の……蝶ちゃんの、お目付け役さ。」
「お目付け役?…是非ともうちの社に欲しいもんだな、そりゃあ。」
何も知らない国木田の発言に、珍しく顔を歪めつつ、二人は業務に戻るのだった。
__椚ヶ丘__
授業中で生徒は皆校舎にいるため、今回着地したのは屋根の上。
そして屋根から降り、勢い良く窓から教室に入る。
『遅れてすみません、殺せんせー!』
「にゅやぁ!!?白石さん!?」
私に刺さる周りの視線。
それと同時に、ざわざわと声が行き交う。
因みに、一番後ろの窓から入ったため、誰にもぶつかってはいない。
『ちょっと用事してて……今、何の授業してました?』
「ああ、今は…」
と私に教えようとした殺せんせーの言葉を遮ったのは、奥田さんだった。
「あ、あの…白石さん。」
『!…何ですか?』
「そ、それどうしたの、?」
恐る恐る奥田さんの指さした方向を見て、どうして教室がこんなにもざわついていたのか、ようやく理解した。
『それって…!!ごめん、嫌なもの見せた。着替えてきます。』
急いで教室から出て、職員室にお邪魔し、替えの服がないかを烏間先生に頼んでみることにした。
「あれ、制服についてたのって…」
「血?だよね、?」
やってしまった。
あの子達に、こんな汚いもの、見せるつもりなんてなかったのに…