第17章 0
『…っ、待ってた……遅いよ…ッ』
「まさかの奇襲に遭っちまってな…蝶がいてくれりゃ気づいてもらえたかもしれなかったんだが…」
「あーあー、中也さんが蝶ちゃん泣かせた~」
「中原さんまた蝶ちゃん泣かせてる〜、かわいそ〜」
「こんなにずっと待ってたのにお褒めの言葉も無しなんて保護者としてどうなのかな〜?」
ピク、と中也の手が反応を見せるも、反論する気は無いらしい。
「そ、うだな………よく待っててくれた…お前なら待っててくれてると思ったよ。俺との大事な約束破った事、ねえからな」
いい子だ、本当にいい子だ…と小さく、しかし強く言い聞かせるように抱きしめて、安心させるように私の背中を撫でる大好きな手。
『…いい子にしてたのに、手袋越し?』
「!…いいや?ついでに言うと蝶さんの髪をくくってもらえるっつう特権付きだ」
中也が手袋を外して私の髪をまとめ始めたかと思えば、置いてきていたはずの蝶のヘアアクセでとめられた。
それにきょとんとして中也を見ると、中也は素手でまたよしよしと私を撫でる。
「やっぱこっちのがお前っぽいわ……言ったろうが?あんま他のやつの前で髪下ろすなって」
『……ふふ、何それ…嫉妬……?』
「…嫉妬」
『な、によそれ……こっちの気も知らな…で……な、呑気な…………』
「…………手前ら、ありがとうな。こいつと一緒にいてやってくれて」
「蝶ちゃんに皆助けられてるからね〜」
「そうそう!それになんてったって可愛いE組の末っ子ですから!」
「末っ子……プッ、こいつにゃぴったりの言葉だなそりゃ!ははっ」
「ね、あれだけ周りに寝ろ寝ろって言っときながらさ~……結局安心しきっちゃって一番最初に寝ちゃうんだもんね〜」
「よっぽど安心したんでしょ、モニタールーム見てみなよ、ありゃあ蝶にはショック大きすぎたと思うわ」
「あ?んだそりゃ……ってまさか映像流れてたってのか…あー情けねえ…………何針か縫ってきたから時間がかかっちまってな。正直この通り、元気とは言えねえ状態だが…まあこいつの寝顔見て癒されるとするか。担任!このキャンプもう少し借りるわ!」
「!どうぞどうぞご自由に!なんといっても白石さんは今回のMVPですからね!特別ですよ!!」
「蝶がMVPなんざ当然だろ!俺の自慢の女だ…んじゃ遠慮なく。俺も夜寝てねえから眠いんだよ……_」