第17章 0
『……調子に乗ってんじゃないわよ、青二才が』
ボソッと口にしてから、踵を返して地下室を後にする。
元の皆のいる牢に戻ればちゃんと皆迷彩ツールで隠れていてくれて、もう大丈夫だよと一声かければ一斉にこっちに駆けてきた。
「蝶ちゃん!!無事で…!?」
「白石、お前よく戻っ……!!!!」
『え、何皆?なんでそんな変な顔して…』
「「「胸元もうちょい隠せ!!!!!」」」
『へ…っ?……ああ、これか。多分瓦礫に体操着がやられちゃったんだろうね。それに私の戦闘にまでは流石に対処しきれなかったんだろうし…烏間先生は?』
私が名前を口にするとそれと一緒に烏間先生がイリーナ先生を連れて歩いてくる。
それを見て少しだけ安堵した。
「…死神は?」
『……地下。見れば分かります』
「見ればって、まさかとどめなんか刺していな…………ッ!!?白石さん、これは!!?」
『私の能力を応用させたものです…とりあえず爆弾は全部消滅させておくとして、私ちょっと疲れちゃったんで先に外出ときますね?』
牢の中から皆を外に移動させればポカンとされる。
しかし正直、それに構っていられるような余裕は無い。
静止の声が聞こえたような気がするが、それを無視して操作室のモニタールームへと戻る。
『………変化無しって…どういう事よ』
ううん、生きてる。
やられるはずない、あんなの相手に。
『無事だよね…約束、したもんね……っ』
もしこの血液が中也のものだとしたら?
もし、この先で中也が倒れたままだったら?
嫌な想像が頭から離れずに、一人その場で足を抱えて座り込んだ。
両膝に顔を埋めて、何も考えないように目を瞑る。
これで、今日来なかったら、来た時に文句言ってやるんだから…
遅いって、待たせ過ぎって…
『言ってやるん、だから…』
一人呟いた声は寂しく木霊してすうっと消えた。
そしてそれに返すようにコツ、と響く足音。
それにバッと顔を振り向かせれば、そこに立っていたのは…
「……蝶。…これは?」
『……か、るま…っ、なんだ、ビックリしたぁ…ごめん、心配かけたよね。外出よっか、私が出なきゃ皆帰れないよね〜』
「…」
アジトのちゃんとした出入口から脱出し、皆は烏間先生が送っていくのだそう。
「白石さんも、良ければ横浜まで…」
『…大丈夫です、能力使った方が速いですから』