第17章 0
心からの言葉だった。
けれど、そろそろ本格的に身体がキツい。
イリーナ先生も冷静になってきたみたいだし、そろそろ私も楽になろう。
瓦礫を移動させてその場で座り込み、それからゆっくりと立ち上がってイリーナ先生から離れていく。
静かに歩いて行った先は、すぐ側にまで駆けつけてきていた烏間先生の所。
「!白石さん、その背中……っ、無____」
ごめんなさい、と小さくまた呟いてから、思いっきり烏間先生の頬を平手で打った。
パアン!!!と乾いた音が鳴り響く。
烏間先生のトランシーバーからえええええ!!!?と声が聞こえるが、そんなものは無視だ。
「ち、蝶…っ?烏間相手に何を…ッ」
『……何、してんですか。…烏間先生、いい加減にしてくださいよ。プロだからプロだからって、そんな大人の理論ばっかり掲げて目の前で死にそうになる人を見捨てられるんですか?子供みたいなことしないで下さい…ッ』
「…子供……俺が、か…?」
『子供ですよ!全然分かってない!!貴方にイリーナ先生の境遇が分かるんですか!?理解しようってした事が一度でもあるんですか!!?…っ、まだイリーナ先生、二十歳なんですよ?…ッ、誕生日を大切な人に祝われる嬉しさがどれほどのものか貴方に分かりますか?…助けを求めたくても求められない気持ちが、貴方に理解出来ますか?』
自分と重なる。
しかしこの世界において決定的に違ったのは、私の傍には中也がいた事だ。
理解を示してくれる人がいた事だ。
烏間先生は目を見開いて私とようやく目を合わせる。
『それでもまだ、プロだからって大人の理論を掲げて一人の人の心を殺しますか?…手遅れにさせちゃ、ダメなんです……私みたいにならせちゃ、ダメなんです』
「白石さん…君は…………いや、お陰様で頭がスッキリした。…イリーナの状態を見てから合流する。操作室の方へ…暫く頼んでもいいか」
『!はい、いいですよ………私が間に合わなかった部分…多分、左足と腕がやられてます。足はまだマシでしょうが、腕の方は添え木をしておいた方がいいかと』
では、と即座に駆けて死神を追う。
勢いで怒ってしまいはしたが、悪いことではなかったと思う。
イリーナ先生は私とよく似てるから。
イリーナ先生は、人生が一度きりしかないんだから。
「……白石さんの方がよっぽど大人だったな」
「…あの子はまだ子供よ」