第17章 0
「…やってくれる……ちゃんと見せておいた方が良いのかな?携帯をよく見ていればいい!!俺が操作室で水を流す前に、見せしめとして中原中也の息の根を止めてあげよう!!」
「!待て!!!」
死神が制御室のある方向へと移動していくのを烏間先生が追っていく。
掌に血が滲んでポタポタと垂れる。
痛い…けど耐えろ、私が今ここを離れたら皆がどうなるか分からない。
「ち、蝶ちゃん…中原さんの所に行かなくても……!」
『……中也は…中也さんはやられない、もの………大丈夫、皆にこれ以上怪我、させないから』
切れた唇の感触。
痛みに全てをぶつけて頭を冷静にさせる。
「……!分かったわ、すぐに行く」
死神から通信が入ったのか、イリーナ先生がそう声を出して踵を返した。
チラリと一瞬私の方を見たその目は殺しをするそれではなくて、ただ私の大好きなイリーナ先生の瞳だった。
だから離れててって言ったのに。
だから、言ったのに。
歩いて死神達の進んだ方向へ行ってしまったイリーナ先生。
嫌な予感しかしない、世界で一、二を争うハニートラップの名手でも見破れなかった演技がまだ死神には残ってる。
まだ気付いてないんでしょう?
あいつが貴方を騙していることに。
貴方のことなんて、なんとも思っていないことに。
『…爆弾は全部私が何とかする。その後イリーナ先生を保護して烏間先生に合流するから、皆はここで死神の目を欺いていてほしい』
「!白石さん、貴女、爆弾を処理するだなんてことが……!?」
試しにカルマの分の爆弾を消滅させた。
「き、消えた…!?え、どこに行ったの爆弾!!?」
『……消しただけ。ごめん、あんまり時間ない気がするから…少しだけ残して監視カメラに映して、あとは皆迷彩ツールで壁に擬態してて。そしたらあいつにも隙が____』
「待ってよ!!蝶ちゃん、怒るのは分かるけど蝶ちゃんだけあんな危険な奴の所になんか……っ、!?」
しつこそうだった。
だから、私の中の私が少し顔を覗かせてしまった。
ごめんね、心配してくれたのに。
ごめんね、いっぱい優しくしてくれたのに。
『足でまとい。邪魔なの、いいからここで大人しくしてて…殺せんせー、水はここには流れてこないようにしておきますから、万が一にでも死神が戻ってきたらすぐに呼んでください。多分聞こえますから』