第17章 0
「…立原、それに探偵社手前らもだ。とりあえず今回は手を引け、せめて蝶が片を付けるまで我慢しろ」
「中原さんまで何を…!!?」
「「足でまといになるんだよ」」
中也と太宰さんの声が重なった瞬間だった。
普段なら絶対に有り得ないのに。
長年の付き合いのせいかやはりお互い理解が深いからか…言い方はあまり良くないけれど、分かってはくれている。
「足でまといって、そんな…でも相手は世界一の殺し屋なんでしょう!?そんな奴相手に蝶ちゃん、一人だなんて……」
「……何を履き違えてんのか知らねえが、人虎。手前忘れてねえか?世界一の殺し屋なら一人じゃなかっただろ」
「私達が行ってしまっては蝶ちゃんが全力を出せなくなるからね。周りに気を遣わせない状況じゃなくちゃ、ちゃんと力を発揮できないから」
淡々と口にする二人に、ようやく思い出したのだろう。
ここに、元々その名を語られていた人物がいることに。
世界一の殺し屋が、死神だけではなかったことに。
『…………行ってくる』
ポス、と中也に軽く身を預ければ、頭を軽く撫でられて、おでこにキスを落とされた。
「おう…ちゃんと迎えに行ってやるからな」
『!……ん、待ってるね!』
無邪気に笑って中也に手を振ってから、一部からの静止も聞かずに扉を作って中に飛んで入った。
すぐさま扉を閉じて、着いた先はE組の校舎。
私の席に超体育着が置かれているあたり、やはり皆死神の元へ行ったのだろう。
もう暗くなってしまってはいるが、殺せんせーが戻ってくるのはブラジルのサッカーが終わってから…まだきっと誰も殺されてはいない。
超体育着に着替えてから髪を解いて、皆とは違う本物の武器を装備して呼吸を整える。
脳裏にちらついた愛しい人の血塗れになった姿を振り払うように頭を振って、それをバネにして殺意をコントロールする。
私の手で決着を着けてやる。
許すものか、他の誰にも殺らせない。
白く淡く輝く、久しぶりに作った大きな扉を開けば、そこは牢屋のような場所で…
「!?…おお、これは驚いたな……まさか、こんな移動手段があるだなんて。イリーナ、どうして教えてくれなかったんだい?」
「契約の内には無かったからよ。それにあの子はただの餓鬼とは違う…私によく似た可愛い子供なの」
地面に倒れて手錠をかけられている皆。
そこで組んでたってわけね…