第16章 力の使い方
「「「迷惑かけてすみませんでした…」」」
E組校舎に戻って烏間先生に謝る子達。
所謂今回朝にやらかした張本人達だ。
「これも仕事だ、気にしなくていい…君たちはどうだ?今回の事は勉強にも暗殺にも大きなロスになったとは思うが、そこから何か学べたか?」
烏間先生もなんというか先生らしくなった感じだなぁ、なんてぼうっと考えているうちにも会話は進む。
身につけた力は自分の為だけに使うものではなく、人を守るために使えるものなのだということ。
そういう事を今回、皆痛感したのだろう。
私なんかなら、中也とか周りからもう少し自分の為にも力を使えと言われて怒られることも多いけれど。
「もう下手な使い方しないっす、多分」
「気をつけるよ、いろいろ」
「考えはよくわかった…だが今の君らでは高度な訓練は再開できんな。なにせこの有様だ」
そう言ってボロボロになった体育着のジャージを出す烏間先生。
「股が破れたジャージ…あ、俺のだあれ」
「ハードになる訓練と暗殺に、最早学校のジャージの強度では耐えられん。ボロボロになれば親御さんにも怪しまれるし…第一、君らの安全を守れない。防衛省からのプレゼントだ、今日を境に君達は…心も体もまたひとつ強くなる」
その言葉と共に全員に手渡されていく新しい体操着…というかこれは、軍服に近いような…?
『え……あの、烏間先生。私も…?』
「?当然だろう、君も俺の生徒じゃないか。本日から体育は、それを着て行うものとする。先に言っておくぞ…それより強い体育着は地球上に存在しない」
考案した側…それも任務で来ている上に訓練過程をもうとっくに終えてしまった私としては、これを渡される意味がよく分からなかった。
けれど、自分の生徒じゃないかという烏間先生の言葉に嫌な気はしなかった。
そんなこんなで少し困惑している私の元にイリーナ先生がやって来て、後ろからガバッと抱きつかれる。
「なんて顔してんのよ!あんたが一番無茶する上に一番身体酷使するような仕事してんだから、有難くもらっときなさいって!」
『い、いやイリーナ先生、私一応依頼で来てて…』
「元を辿ればここの生徒になってくれという依頼だ、何も問題は無い。君の安全も等しく守られなければならないというのは当然の話だ……元より、君の行うような危険な仕事でも対応出来るよう設計してあるのだから」