第16章 力の使い方
「拍子抜けだったなァ」
「やっぱり前回のはまぐれだったようだね〜」
「棒倒しで潰すまでもなかったな」
テスト返しが終わって、A組の浅野君率いる五英傑が渚君、杉野君、岡島君に絡んでいる。
ような気がする。
というのも、私は今これまでにない程にぼうっとしているのだ。
「あーらら、あいつらまた絡みに行ってるよ。蝶、どうする?あれ」
『はふ…どうしよ……』
中也がかっこよすぎて心臓が持ちそうにない。
「言葉も出ないねぇ、まぁ当然か」
「この学校では成績が全て!下の者は上に対して発言権は無いからね」
「へーえ、らしいよ蝶?じゃこいつらは俺らに何も言えないわけね?」
「!カルマ君に白石さん…」
カルマと一緒に歩いていけば浅野君達の近くに来た。
いや、そんなことより帰ってからだよ帰ってから。
大丈夫かな、そろそろ恥ずかしさにやられそうな気がするのだけれど。
「気付いてないの?今回本気でやったの俺らだけだよ。他の皆はおまえらの為に手加減してた…おまえらも毎回敗けてちゃ立場が無いだろうからって。でも次は皆容赦しない。三学期になれば、内部進学のおまえらと高校受験の俺らじゃ授業が変わる。同じ条件のテストを受けるのは次が最後なんだ。二ヶ月後の二学期期末、そこで全ての決着をつけようよ」
「…ちっ、…上等だ。しかし赤羽、お前は今回二位だろう?白石さんはともかくとして、気は抜いていられないんじゃないのか?」
「!そうだ白石さん、今回も見事な一位!!是非この後一緒にお茶でも『はぅ…ッ』え、まさか白石さん僕に気が…!!?」
『か、カルマぁ…っ、どうしよう、中也と会ったら私今度こそ死んじゃうか……あれ?これどういう状況?』
「「「えっ」」」
キョトンとあたりを見渡すと全員からポカンとした顔を向けられた。
「……蝶?ずっとなんか考え事してるなとは思ってたけどさ?まさかここまで気付いてないなんて驚きなんだけど俺」
「白石、まさかずっと今日中原さんの事考え『きゃぅ…!?』……なんだこの乙女…おいカルマ!!白石どうしたんだこれ!?おい、しっかりしろお!!」
「あーあー、名前聞いただけでショートしてるよ……この学校、この子が一応一位なんだけど…大丈夫かな?頑張ってくれよ五英傑。じゃあね〜」
ほら、校舎戻るよ〜とカルマに手を引かれて我に返って歩き始めた。