第16章 力の使い方
以前のような事があったからか、親バカサイトに囲って甘い物で餌付けをするのは禁止だというルールが追加されたらしく、チラチラと見られはするものの平和にゆったりと過ごせていた。
すごい、いつもなら中也を探すのにもいっぱいいっぱいになるのに。
なんて状況とは一変、今は隣に中也が付いてるくらい。
『…中也、好きなの選んでこないの?』
「ん?お前の隣が一番好き」
『そ、そういうんじゃなくて…ッ』
「……横にいた方が安心だろ」
え、と拍子抜けしている内にもどんどんケーキが山積みになっていく中也のお皿。
『ち、中也…?その量どうしたの……?』
「あ?どうせ半分食わされんだろ、あんま重てぇもん持つなお前は。それにお前の好みなら俺は把握してるしな」
ケーキのみに留まらず、アイスやプリンまで…私がどれをどれだけ食べたいかを本当に熟知しているように、迷うことなくお皿に盛り付けていく。
『……なんか今日、中也優し…?』
「………別に優しくはしてねえよ。ただ、好きな女が余計女らしくなっちまったら甘くもなる」
『!!…ッ、も、もう取れたでしょ!早く食べよ!!!』
「まだお前フルーツがいるだろ?」
『なんで分かってるのよもう!!もう!!!』
詳しすぎて余計に恥ずかしくなった。
それから結局中也は本当に私の理想以上の品をお皿に盛り付けてしまい、山盛りのお皿を二つ軽々とテーブルの上に置いてしまう……のだが。
「ほら、口開けろ。お前が好きなもんしか取ってきてねえはずだぞ」
『…じ、自分で食べれ……ッ、…おいしぃ』
「それなら結構…ってこれマジで美味ぇな、今度作るか」
『な…っ、そ、れ……ッ』
私に食べさせたそのフォークで軽々とケーキを口にした中也。
「今更だろ…それともなんだ?口移しの方がお望みかよ、お嬢さん?」
『い、いい!!!いい、けど!!…そ、ういうのばっか…恥ずかし、から……』
「だろうな、もちろんわざとだ」
クックッ、と喉を鳴らして笑いを堪えようとする中也に余計に顔が熱くなる。
だめだ、なんていうか、ここまで気を許した相手が久しぶりすぎてどうすればいいのか分からない。
『あ、ぅ…お、いし……です』
「!え、何お前今の?可愛いなあ、ったくもう…本当どうしちまったんだよ?」
『ち、中也が好き…すぎ、て……なんか、おかしい』