第16章 力の使い方
「もー、どうしたの今日は?蝶ちゃんやけに大人しすぎない?ねえ、お洋服見に行く?」
『……中也が一緒なら行く』
「…中原君何したの?」
「さあ……ちょっと懐きすぎちまいましたかね?可愛いでしょう?」
「ちょっとじゃないよ!!なんで前でもあれだけ懐いてたのに更にそんなに懐いてるのさ!?」
可愛いけど!!!と喚く首領は気にせず、両腕を絡めている中也の左腕にぎゅう、と擦り寄る。
するとはいはい、と中也に撫でられて更に機嫌がよくなる私。
嬉しい、私の中にあるのはただその気持ちだけ。
『…ね、中也……ケーキバイキング、もう一回行きたい。中也と二人でちゃんと行きたい』
「!また唐突な…いいぞ、いつ行く?今からでも行くか?」
『い、今からって学校…』
「テスト返しだけじゃねえか、しかもお前今の今まで探偵社で働いてた上にポートマフィアの手伝いまでしてたんだ。誰も文句言わねえって、昼飯代わりみてえなもんだろ」
「な、中原君がそんな事言うだなんて珍しい…そういう事は絶対に教えないような子だったのに?」
本当に珍しい。
仕事に真面目で、太宰さんにからかわれてる時はあれだけど根がしっかりしてる人だから余計にだ。
所謂サボりという名の行為にあたるその行動を提案されるだなんて思ってもみなかった。
「いいじゃないすか、一回くらい…まだ子供なんですから。それにこいつは学生やるまで、ポートマフィアと探偵社で働き詰めだったんですよ?たまにはサボる事くらい覚えさせねえと」
それに、と中也はこちらを振り向いて、一瞬ふと微笑んだ。
私だけに見せるあの顔。
私以外にはきっと誰も知らない、ずるい顔。
「こいつ全然大した我が儘言ってくれねえんすから。真面目ないい子にはたまにの褒美くらいあってもいいでしょう?」
「!そりゃあそうだ!まったく、いい親に出逢えたものだ蝶ちゃんも!最初は大丈夫かと心配していたが…良かったね蝶ちゃん。これ、中原君照れてるだけでデートに誘い直してるんだよ」
『!そうなの…?』
「……ほら、とっとと行くぞ。サボるのは今回は許したが休むのは許してねえからな、何よりあの担任が心配するから」
『…デート……?』
「…………仕切り直しがいるだろ?前のあんなもんはノーカンだノーカン、今から行くのはその詫びな。ちゃんとしたそれはまた休みに行こう」