第16章 力の使い方
朝はまだ私の身体が痛いだろうと中也が作ることになって、それから朝食が完成するのを待っている状況だ。
なんとかテーブルの椅子にまで移動して、突っ伏すように頭をテーブルに預けている。
が、そこで私は見つけてしまった。
恐ろしいものを…無理矢理身体に刻み込まれた嫌な嫌な思い出を。
ガタッと椅子から崩れ落ちるもそんな痛みなんて気にならなくて、この世界に存在しないはずの人物の面影を頭に思い起こしながらそれを見る。
「蝶!?どうした!!?」
『ぁ……な、んで…ッ?なんであん、なの……っ!!な、何でもない!!何でもなくって…』
「あんなのって……!…あー…蝶?お前記憶飛んでるんだっけか?それなら大丈夫だから、もう安心し___」
『……私、何か変な事口走ってた?何か変な事話してた……?中也…さん、私…』
はあ、とため息を吐いてから、中也は私の前に来てしゃがみ込み、頭に柔らかく手を置く。
それに目を見開いてそちらを向くと、大丈夫だ、とずるい顔をして微笑む中也。
「お前の…元の世界の兄貴の件についてはちゃんと昨日聞いた、お前から。今もこうして一緒にいる上に、お前は忘れてっけどまた身体を重ねて、またお前に惚れて好きになってる…それが答えだよ。心配すんな、俺は世界一頭がおかしい人間らしいから」
『!……嘘…聞いた、って……嫌じゃないの!?気持ち悪いって、汚いって…ッ、思わ…ない、の……っ?』
「思わねえよ、何せお前がまだ当時小さかったのもあってか、お前は心底心配してるが行為的にはそこまで進んだことはされてなかったみてえだし…仮に最後までされてたところで、お前はただの白石蝶だ」
目を丸くして中也の目を見た。
パチッと合った彼の綺麗な青い目は優しくて、しかし芯があってどこか力強くって。
「お前は純粋すぎるから分からねえだけで、本当に汚くなんかねえんだぞ?俺がいる上で複数の野郎とんな事ばっかり進んでしてんならともかく…そうじゃねえってことは俺が一番よく分かってる」
『……汚れて、ないの?…蝶、中也のとこにいてもいいの?普通の女の子の身体…?』
「当たり前だろ、多少可愛すぎる位に敏感なことはあっても…俺からしてみりゃ余計に可愛らしいもんだ。……お前はちゃんと、綺麗だよ」
『…………好き…?』
「おう、大好きだ。何より一番愛してるぞ」
『…ッ、あ、りがと……』