第16章 力の使い方
『んにゃ…たにらきさぁん……』
「どうしたの?蝶ちゃん」
『中也がね!?蝶の事おいてどっかいっちゃったの!!今日は俺無しでーとか言って!!!』
「あ、ああ…気が利く立ち回りを選んでくれ『ギュってしてくれなきゃやぁあ…!!』……誰ですか今日蝶ちゃんにお酒盛ったの!!?」
探偵社、中也いない、寂しい。
今日いっぱい褒めてくれるって言ったのに。
谷崎さんに軽くギュッとされてよしよしと撫でられながらもムス、と不貞腐れる。
否、泣いてるのを誤魔化すように顔を強ばらせる。
「白石に酒を飲ませたがる奴がいると思うか!?あの時の悲劇を忘れたのかお前は!!?」
『くにきらさんが怒ったぁ…っ』
「ああああ蝶ちゃん、国木田さんは怒ってな『くにきらさん嫌い!!!』蝶ちゃあああん…!!」
「……太宰、お前だな?飲ませたの」
「やっぱりバレました?いやあ、可愛いでしょう?谷崎君にこんなに懐いてるなんてびっくりだったけれど」
「蝶ちゃんなら許せるナオミもナオミですわ…何故でしょう、悔しくも何ともなくただただ可愛いものを見ているような…」
ピシッと固まった鬼、国木田さんを無視して優しい神様谷崎さんの所で更に不機嫌になる。
『……太宰さん』
「!何だい?蝶ちゃん」
『中也連れてきて』
「私がただでそんなことすると思うかい?…治優しい大好きって言いながら私にぎゅってしてくれたら呼んであげる♪」
「え、太宰さん!?蝶ちゃんがそんなことするわけが____」
敦さんの声は無視して、吸い込まれるように太宰さんの所に歩いていく。
そのまま腕を太宰さんの腰に回して、ぎゅう、と抱きつく。
…落ち着くんだよ、ここ。
仕方がないじゃないか、安心するんだよ。
『……治優しい。大好き…中也の次に』
「…中也の名前を出さずにもう一回?」
『意地悪する太宰さん嫌い』
「ごめんなさい」
待っててね〜、すぐ呼んであげるから、と言って携帯を片手で操作した太宰さん。
すると途端に、静かに探偵社の事務室の扉が開かれる。
「あらら…そんなに怒ると眉間のしわが増えるよ?蝶ちゃん怖がっちゃうじゃないか」
「うるせぇよ…こいつに酒飲ましたの手前だろ。んなもんこっちは分かっ『中也…?』……こっち来い」
中也に言われて、それに従ってトテテ、と中也の元に駆けていく。
大好きな中也のところに。