第16章 力の使い方
松方さんの言葉に中也は目を丸くしてから、すぐにニ、と口角を上げた。
「そりゃあ、俺の自慢の蝶だからな!世界一の俺の誇りだ!!蝶褒められたぞ〜、お前やるじゃねえか、人からこんだけ言ってもらえるなんてこと普通ねえぞ〜?」
『わ、わっ!!?ちょっ、中也、ここ今皆いるんだからそんな親バカ発揮しな……っ、ち、中也さん!!!』
唐突に抱き寄せられてわっしゃわっしゃと存分に可愛がるように頭を撫でられた。
「はっはっは!こっちの方が歳は近ぇのに保護者ときたか!面白ぇ家族なこった…んで?蝶ちゃん、この兄ちゃんとは付き合えたのかい?」
『!!?…ッ、ほ、ケホッ……な、なななな何言って「好きな男だったんじゃねえのか?」なんで松方さんが知ってるんですそんなこと!!?』
「そりゃあ分かるさ、こちとら子供を見るプロなもんでな…その様子じゃあ上手くいってるみてえだな?兄ちゃん、女の子は鬱陶しいくれえに大事にしてやらねえとすぐ他に取られちまうぞ?こんなに可愛らしい子なら余計にだ」
「甘いなじいさん、俺は鬱陶しい通り越してもうしつこ過ぎて嫌だって言われるくれぇには可愛がってんぞ。正直今すぐにでも家に持ち帰って今日褒められてたのを全力で褒めてやりた『中也さん、皆いるからそろそろやめて』……ってな具合だ」
わなわなと震えながらも嫌じゃないから強く言えない。
思わずカエデちゃんの背中に隠れればよしよしとクラスの皆から頭を撫でられて、余計に恥ずかしくなった。
「蝶子供受けも良かったのにね〜、この二週間で何回プロポーズされてたよ?」
「あ?今何つったカルマ、こいつのこと口説こうとした奴がいるってか?今すぐ連れてこい、ここで処『さないで』…ならしめ『るのも禁止』……」
『ちっちゃい子に何大人気ないことしようとしてるんですか!ほら、帰るんでしょう!?早く帰りますよ!!』
中也のところにズンズンと近寄って、不機嫌そうに装いながら声を張る。
「お、おう!?なんだよお前そんないきなり機嫌損ねて…」
『………ちっちゃい子に中也さん取られるの嫌』
「よし帰ろう、今すぐ帰ろう。烏間さん悪いな時間取らせて、車何台かあるから全員乗せてとっとと山行こう。んでこいつ連れて帰らせてもらうわ」
「え、あ…ああ……?構わないが…」
「「「車!?やった!!!」」」
気利きすぎでしょ、本当……馬鹿。