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第16章 力の使い方


勘違いが広まる前に、ちゃんとハッキリと声にした。

『……松方さん、知ってるでしょう?今は私武装探偵社で働いてますけど…言いましたよね、あの時、私達がどんな仕事してるのか』

「あ?…あ、ああ……横浜のポートマフィアだろう?あの兄ちゃんも確か…『亡くなったんです、あの後』…亡くなった?」

『殉職です。今は、もうこの世にはいません…最後まで馬鹿みたいにいい人でしたよ、相変わらず子供が好きで、優しくて…』

「え、待って蝶ちゃん!?亡くなったって、中原さんの事じゃなかったの!!?」

てっきりそうなのかと思ってた、と目を丸くする皆に一度困ったように微笑んでから、松方さんに向き直る。

『ごめんなさいこんな話して。でも嘘吐いちゃいけないことだと思ったんで…』

「…………大丈夫だったかい?あれだけ懐いていた相手が亡くなって…あんなにちっちゃかったのに、よく今もいい子に育っておるわ」

『……私が本当にいい子だったら、迷わずあの人の命を優先して無理矢理にでも助けてましたよ』

小さな子供が大好きだったあの人。
孤児がいたら引き取って面倒を見ていたあの人のように、松方さんもまたそういう施設を作ってくれていた。

だからここに来た時、余計に心が揺さぶられた。

「そこは君が思い詰めるような所じゃないとは思うが…今度墓の場所でも教えてくれねえか?」

『!…お墓なら、いいですよ。ただあの人が息を引き取った場所は今私の土地になっますんで…そっちには、すみません』

「いいさいいさ、彼にも心の底から感謝している……ああ、でもそうか、あんなにいい男がなぁ」

『いい人だなんて言われてれば嬉しがってると思いますよ』

「はは、そうかい。君もあの兄ちゃんに似て、前よりいい子に育ってるみたいだしな」

本日何度目のそれだろう。
いい子だって、客観的に見てそう言われることなんて滅多にないから…

熱くなる目頭に知らないふりをして、誤魔化すように頭を下げた。
見られたくなかった、誰にも。

あの人とのことは、私とあの人と二人だけの思い出でいい。
私と私のお兄ちゃんの思い出で、それでいい。

ふわりと私の長くなった髪を靡かせた、秋なのにまだ少し暖かい優しい風に、彼の微笑みを思い浮かべた。

私、いい子に育ってるかな。
見ててくれてるかな。

そういえば誕生日が、今年も無事に来たんだよ…織田作。
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