第16章 力の使い方
『いや、本当に大したことじゃないですから!大丈夫ですよ、松方さんもお元気そうでなによ「大したことじゃないわけあるか!!君がいなければこの施設は今頃ここには建っとらん!!」い、いや、ですからあれは私達が勝手に気が向いてしてた事で…』
話が読めずに首を傾げる皆に向かって、松方さんは嬉しそうに笑いながら私の話を持ち出した。
「お前ら良かったなあ、こんないい子が同じクラスで友達なんざ…この子はこの託児所が出来る前…というより出来たばかりの時にここを救ってくれた恩人なのさ」
『いや、だから恩人とか言い過ぎで…』
「「「恩人!!?」」」
ほら、やっぱり話に尾ひれがついていく。
だから大したことないって言っておいたのに。
「言い過ぎじゃないさ、ここが出来てすぐに放火魔に火を放たれて…それですぐにここに建った建物は灰になってしまった。が、そんな所で放火魔を捕まえるだけにとどまらず、託児所を作る予定だったっつう理由を知っていたとかで寄付金まで残してさっさと去って行っちまったんだよ!」
『だからあれはただ気が向いたからで』
「気が向いただけで子供が出すような金額かあれが!?ボランティアとかいうレベルじゃなかったぞ!!!」
ざわつき始める皆に向かって、松方さんはざっと建物が一つ建てられるくらいの金額だと説明した。
そう、この二週間で私達が増築して作りかえたあの建物…あれは私が小さな頃に補助をしたものだ。
たまたま東京に来ていた時にたまたまその現場に居合わせて…託児所になる予定だったことも知っていた。
だから、私がもう少し早くに犯人を仕留めていれば良かっただけのこと。
小さな子達が必要とする場所を簡単に壊すだなんてことはしたくはなかったから。
小さな頃の一番大きな買い物だった…ううん、買い物なんかじゃない。
こういう使い道を選んでくれた松方さんのおかげだ、今なんて想像もしていなかったほどの子達がここで過ごして、活き活きしてる。
「して、あの時一緒にいたあのお兄ちゃんは元気か!?えらく世話になったもんだが…………蝶ちゃん?」
松方さんが笑顔になる反面、私の気分は沈んでいく。
嘘をつくべき事じゃない…それが分かっているから、隠せないし演じることが出来ない。
「あ、もしかして中原さんかな?」
「そうだろ、それなら松方さんビックリするんじゃねえか?今なんかもう__」