第16章 力の使い方
『……え、何今の?まさか心配してるの?寺坂君が??あの寺坂君が??』
「あのってなんだよ失礼だな!!?」
「まあ日頃の行いだな……白石、こういう事だ。手配は任せてしまうことにはなるけど、運ぶのくらいは手伝わせてくれ。どうせまた変な方法考えてたんだろ?」
図星をさされてうぐ、となる。
いや、変な方法じゃないし。
ちょっと能力使ったり探偵社の小型船使ったりしようかなとか考えてただけだし。
まとめて浮かせて積んじゃおっかなとか思ってただけだし。
『で、でもこういうのは普通人間の力で行うものじゃなくて機械の力を借りてね?』
「トラックぐらい出すっつうの。うちのやつ使えばいい」
吉田君の提案に私の方が今度は驚いた。
『いやいや、そんな横浜までなんて!!』
「「「いいからお前は黙って大人しく手伝われてろ」」」
『…は、はい……』
言い負かされた。
三対一は酷いよ、三対一は。
村松君と狭間ちゃんと糸成君を見習いたまえ。
「ま、一人で運ぶなんてばかな発想だよな。そんな所も天然で可愛いが」
『うん、じゃあ糸成君は今からこれよろしくね』
「誤魔化した」
「無かったことにしたぞ今」
「完っ全に照れてんなあれ」
『何?横浜から歩きで木材運んでくるって?』
「「「仕事に戻りマース」」」
何も聞いてないし聞こえてないよ。
そう、なんにも無かったんだよ。
とりあえず今手元にある材料と道具だけで作れるものから作っていく。
二週間あってこれだけ動き回れる人員がいれば大丈夫だ。
最悪間に合いそうになかったら、その時は私が何とか奥の手を使えばいい。
そして、ふとここに来て頭に思い浮かんだ事が一つ。
そういえば私まだ殺せんせーに会っていないのだけれど…
『……中間テストどうなるんだろう?』
「ぐっ……て、テストか?そりゃあ勿論…………テスト勉強は禁止だとよ」
『あー、そうなるかぁ…じゃあこっちにちゃんと専念できるわけだね、了解。ありがとう教えてくれて』
「?不安は無いのか…?」
『無いよ、私これでも人より勉強はしてきてる自信あるから。ちょっと点数落としちゃうかもしれないけど、A組だけいい顔させるつもりもないし…私以外にも期待できそうな子ならいるしね』
チラリと横目に見た頼れる友達の今後を考えて少しだけ微笑んだ。
今、すっごく良い感じだよ。