第16章 力の使い方
『ご、ごめんお姉ちゃんちょっと話についていけな…』
「ほら困らせてる!あんた達なんか二人揃って双子の弟で十分よ!」
「それでお母さんが独り占めする気だろ!分かってんだぞ!!」
話が余計にややこしくなった。
『あ、あの…落ち着こう?私は何でもいいから、とりあえず仲良く…』
「「「譲れない戦いがここにはあるの!!!」」」
『あ、はい…』
子供に負けた。
何も言えない、うん、本当に何も。
いや、でも言い合うのはそんなにいい事じゃないとは思うし、それに悪い子達ではないんだろうし…子供に接するのって案外結構難しい。
よく私相手にあんなに上手くしてたなあ、中也。
そういえば中也は何してるんだろ、書類整理かな…それとも今まだお昼前だし、ちょっと仮眠でも取ってるかな?
今の私みたいに、ちょっとでも私の事考えてくれてたりしないかな〜なんて思い浮かべてみたり。
「ねーねー、お姉ちゃんはどっちの方がかっこいいと思う!?」
『え〜?そりゃあ勿論中也が一番かっこい…?あれ?』
ピシャッと固まる子供達。
あれ、何この空気、いや確かに私ぼうっとしてたけどさ?
「………お姉ちゃん彼氏持ち?」
「う、嘘だ…俺達の天使が……」
「希望の光が……!!」
なんか最後の台詞聞き覚えある…じゃなくて。
『え…い、一応……?』
「どんな人!!?私が認めるような人じゃなきゃ…!あの人!?」
女の子の指さした方向に目を向けると、そこには見知った赤い髪。
カルマがえっ、という顔をしてそこにいた。
『え、カルマ!?そ、そんな事言ったらあのお兄ちゃんに失礼だよ、私なんかじゃ勿体なさすぎるって!!』
「待って蝶何言ってんのちょっと!?」
「じゃあ誰?ここにいるお兄ちゃん達!?」
『ち、違うから!!ここにはいないよ!?』
「「「連れてきてその人!!!!」」」
う、嘘でしょ。
子供ってこんな感じだっけ、すごいな好奇心…というか積極性が?
『あ、相手の人も忙しいから…ね?』
「試験だ!!」
「納得いかない相手なら俺が蝶ちゃんの旦那さんになる」
「結婚するのは僕だよ僕」
今、結婚してるって言いたくなった。
する予定だとも言いたかった。
だけどそれを言う勇気が私には無い。
どこかで自信が無いから。
二十歳になるまで生き抜く自信が…半年間死なないでいるという自信が。