第16章 力の使い方
「え、っと…蝶ちゃん、見えてるけど」
『へ?何が?』
「首と肩と…み、見えてる」
首と肩なんて言われても見えないしな、と、苦笑しながら指摘するカエデちゃんと片岡ちゃんの声に合わせて襟元を緩めてみるもののやはり見えない。
それに、なんだか余計に片岡ちゃんとカエデちゃんの様子が変になってきたような気が…
「蝶ー、託児所でキスマーク見せびらかさないの。あと人前で襟元開けたりしない」
『あ、それか。…ありがとう?』
襟元のボタンをカルマに閉められて、ようやく意味を理解した。
「や、やっぱりそうだよね!?何!?中原さんと!!?」
「ていうか数よ、数」
『昨日いっぱい付けたら仕返しにいっぱい付けられた』
「あ、蝶の方から付けたんだ?」
『変な虫が寄り付いちゃ嫌だもの。あの人無駄にかっこよすぎるから、ちゃんと虫除けを「あああ!!!あのお姉ちゃん知ってる!!蝶ちゃんだ!!!」…え、私!?』
突如鳴り響いた大きな声にそちらを振り向くと、小さな子達が私の方をまじまじと見ながら目を輝かせていた。
「武装探偵社のお姉ちゃん!!」
「かわいーお姉ちゃん!!」
「ねーねー、あっち行って遊ぼうよ!」
『ええ!?あ、あの…ちょっ……』
腕を引かれて引きはがすわけにもいかず、そのままずるずると引き連れて行かれた。
「蝶ちゃん有名人だもんねぇ」
「武装探偵社とか憧れしかないし」
「……ちょっと俺様子だけ見てくるねー」
こ、子供ってどう相手にしたらいいのか分からない。
とりあえずリクエストに応じて色々一緒に遊んだりはしてるけれど…あれ、こんなので良かったっけ。
「お姉ちゃんお姉ちゃん!次はおままごとしよ!!」
『お、おままごと…?』
おままごとなる遊びに疑問を抱きつつも、聞いていれば何やら家族ごっこというものをするものらしい。
それぞれがお母さんや子供の役割を担ってごっこ遊びをするという単純なもの。
なのだが。
『え……っと、なんで私が妹…?』
「可愛いから!!お姉ちゃん俺の妹になってくれるならおままごと入る!」
「あ、なら僕その彼氏役で」
『へ!!?え、か、彼氏さんって…』
「お兄ちゃんとの三角関係にする気か!?正気かよ!!」
「いや、お兄ちゃんやめて友達になって取り合えばいいでしょそこ?」
「妹ポジションの良さが分かるか!?」