第16章 力の使い方
「ほら、今日もよく食えました…偉いぞ蝶〜」
『む、無理矢理食べさせておいて何を「お代わりが欲しいってか?」ごちそうさまでした』
帰宅してからの夜ご飯。
毎度の如く中也から規定の量を食べさせられて、もう私の方は完全にダウンだ。
味覚が少し戻ってきたからまだ以前よりもマシとはいえ、量にはやはり慣れない。
「今日も昼も夜も美味かったよ、サンキュな」
『……ん』
食事に関してはいつもこんな感じだ。
いつも、こういう言葉を最後に忘れずかけてくれる。
なんでこんなにもこの人は素直になれるのだろう。
「ま、ただ今日は蝶さん寂しかったらしいし、俺はデザートがもうひとつ欲しいかもしれねえなぁ」
『へ…も、もう一個?時間がかかっていいなら作「ああ、違う違う。お前を食べたい」わ、私……?…え、あの、中也!?』
椅子から立ち上がってこちらに歩み寄った中也。
かと思いきや私を抱え上げてソファーに移動してそこに下ろす。
「………キスならしていいか?今日のお前見てたらしたくなった」
『ぇ…ッと、…あ……ど、ぞ…っ』
改めて許可なんてとられると恥ずかしすぎて調子が狂う。
私の了承に中也は私の頬に手を添えて、それから少し長めの、触れるだけのキスをした。
「…まだ寂しい?」
『……寂しく、ない…』
「本当か?ならいいが…俺に構わずどんどん甘えてくれていいんだぞ、お前は」
『………じゃ、じゃあ今日も一緒に寝る…ぎゅうってして寝る』
了解、と言ってから、中也は他には?と私の目を見て聞いてきた。
他…なんてなんにも考えていなかった。
だけどこんなに近くで中也からこんな風に優しくされると、私の独占欲はどんどん膨れ上がっていく。
中也のことなら大丈夫だとも思うけれど…私は形にしないと不安な子だから。
『…ン……』
「!…ッ、あ?お前……」
中也の首元にキスをして吸い付き、それからそこをペロリと舐めて一旦離れた。
『…いっぱい私の印付けるの』
「……してやられたよ、全く…キスマークなんざ付けてえってわがまま言う子供がいるとは思わなかったな」
『中也は私のだもの…………ダメ?』
「いや、いい。……ただその代わり俺にも付けさせろ」
中也の言葉に一瞬目を丸くするものの、なんだか嬉しくてはい、と頬を緩ませた。
たまには子供になってみるのもいいのかもしれない。