第16章 力の使い方
「とりあえず今日の分の報告は以上になりますが……首領、どうかされました?」
「い、いや…蝶ちゃんがいるのにもビックリなんだけど、それをおいといてもいつもよりベッタリだなあって」
「可愛い奴でしょう?本当。今日は寂しくて俺に早く会いたかったらしいんですよ。それで衝動に駆られてついつい来ちまったとか…うちの蝶マジで可愛い」
『は、恥ずかしいから変な事言わなくていい…』
言葉通りベッタリとくっついているわけなのだけれど、それに更にギュ、と中也に回した腕に力を入れた。
「よ、よく蝶ちゃんそのまま歩いてこれたね…?」
「遂にうちの蝶にもイヤイヤ期が来ましたかね」
「なんで中原君イヤイヤ期とか知ってるの?」
「蝶の事育てるのに色々調べてたら『私イヤイヤ期とかいう歳じゃない』らしいです、イヤイヤ期じゃなくてわがまま期です。随分子供らしくなってくれましたよ、親冥利に尽きますね」
この人マフィアよりも保父さんの方が向いてるんじゃ…?
なんて思ったのは心の底にしまっておいた。
他の子達にまでこんなことされてたまるか、そんなの私が許すわけがない。
「う、うん…怪我が無かったなら何より……けど本当に驚いたよ、あの蝶ちゃんがこの時間帯に中原君の任務先に来ちゃうなんて」
「これくらい衝動的に動いて俺の所に来てくれちまった方が安心ですよ寧ろ。普通の餓鬼なら鬱陶しいっすけど、こいつならこれくらいしてくれた方が可愛いっすね」
『!……な、何その差別、可愛いとかいらない…っ』
「お、照れた照れた。ここは大人だよな、餓鬼なら大概適当に可愛いっつってれば喜んで機嫌よくするところだぞ」
『ち、中也ってもしかして子供嫌い…?』
「あ?あー…別に特に情が湧いたりはしねえな、ただお前は好き」
カアア、と顔を熱くしてポカポカと中也の背中を叩けば更に楽しそうに笑われた。
親バカだ、ただのバカだ。
この人もこの人で、なんでそんなに私以外に興味無いのかしら。
……子供が産めないって分かってて、それでも本当に私にしか興味無いんだ、この人。
私が子供みたいなものだから、もういいとかそんな事言う人いるかしら、普通。
「ははっ、子供らしくて結構。ただ、来るのはいいがちゃんと安全か確認してから来いよ?何かあったらいけねえから」
「…中原君も随分と親らしくなったものだね」