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第16章 力の使い方


家に帰ってご飯を作りながら、今日の事を思い返してぼうっと考えていた。

そして帰り際に皆で決めた計画を。

知っている人のために働けることになるとは思わなかったけれど、これはこれでいい経験かもしれない。

ただ、やはり小さな子達に会うような勇気は私には無い。

『………可愛いんだろうな…』

小さな子供と関わるような事があればいつもこうだ。

自分に無いものを持っている、自分の入る事の許されない普通の世界で生まれた子供達。

そして、私と血の繋がりを持つ事は永遠にないであろう子供という存在。

別に寂しいわけじゃない。
中也がいるし、満足していないわけでもない。

だけど子供という存在が嫌いでない分、余計に私は思うのだ。

____好きな人との子供が出来るって、どれだけ幸せな事なんだろう

何百年もそう思う事はもちろんあって、結局答えは分からなかった。

体の中に卵胞が無いだけでなく、私には子供を出産するために必要な準備に値する現象が起こらない。
身体にそういった現象が起こらないのだ。

女子中学生にもなれば悩まされる子も多くなるであろう月経も、もちろん無い。
今だけの話ではなく、今まで生きてきた中でそうなった事が一度も無いのだ。

もう分かってる、というか知ってるし、感じてる。

私の遺伝子は、この世に残してはいけないものだから。
こんな身体が二つも存在してはいけないものだから。

死者が現世で子孫を残すことは、全世界の摂理に反する事だから。

子供が欲しい…子供になりたい。
二つの欲求を抑え込むのにどれだけ私が必死な事か。

『…今日もまだ忙しいのかなぁ……』

テーブルに料理を並べてそこに突っ伏し、大好きな人を思い浮かべて眠るように考える事を放棄する。
慣れたものだ、こんな事。

中也とも、もっと一緒にいられたらいいのに…なんて無理な事考えて、意識を沈めさせていく。

夜の横浜はポートマフィアの時間。
こんな事はざらにある。

『………外、行ったら会えるかな』

無性に彼の温もりを感じたくなって、作った料理を能力で状態を保持させたまま靴を履いた。

怒られるかな…心配されるかな。
でもいいじゃない、たまには私から行ったって。
いいじゃない、たまには私だって…寂しくなる時も、あるんだから。

扉を作って中を覗けば、そこには愛しい彼の姿が存在していた。
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