第16章 力の使い方
「そういえば蝶ちゃん、ヘアアクセなんて普段付けてたっけ?」
『へ?…ああ、これか。そういえばこんなの付けたの何年ぶりだろ』
業務が終わる頃に、矢田ちゃんが話しかけてきたため、つい先日中也からもらったばかりの蝶の飾りに指で触れながらううん、と考える。
「あ、もしかして中原さんからのプレゼント?」
『うん、そうそ…ってなんで分かるの!?』
「いや、嬉しそうだったからそうかなーって」
わかり易いから、と笑われる。
か、可愛いから怒れないぞ。
『…た、誕生日プレゼントだってさ。こういうの、あんまり持ってなかっただろって…あと私が何にも欲しがらないからてきとうに買ってきたけどとか』
「……てきとうな割にはすごい凝ったデザインな気がするけどね」
『うん、どこのお店で見つけてきたんだろこんなの。あの人どこまで探し回ったのかも想像つかないとこがちょっと凄いんだけど』
「だけど本当、中原さんって蝶ちゃんの事よく知ってるよね!一緒に選んだわけじゃないのにこんなに蝶ちゃんにピッタリなのなんて普通選べないよ!誕生日プレゼントって、他に誰かから何かもらった?」
『あー……うん、なんかすごい量のスイーツが探偵社宛に送られてきてた。多分親バカサイトの影響』
察しがついたのだろうか、苦笑いになる矢田ちゃん。
まあ美味しく頂きましたけどね、勿論。
『後は、探偵社でまたパーティーしてくれるらしいのと…多分首領も何か企んだまま隠してるから、またプリンかなにか食べれるかもしれない』
「も、森さん見抜かれてる…」
『絶対私の誕生日とか放っておいてくれないから、あの人。プレゼント何か言わなかったらしつこいくらいにお願いだから何か考えてくれって頼み込んでくるからね、それも泣きながら』
「冷たい言い方しないで何か頼んであげて蝶ちゃん…!!」
女子中学生に同情される始末。
哀れ、首領。
どんまい、首領。
そんな中、子供達が皆家に帰っていったのだろうか。
そちらの仕事をこなしていた子達がこちらにやってきた。
「とりあえずこっち全員帰ったから、今日のところは終わ……え、蝶ちゃんまで来てた!!?」
『う、うん、そりゃあ…』
今日一度も会っていなかった子達の中から、恐らく朝にフリーランニングをしていた子達から口々にごめんねと謝られる。
まあ、こういう間違いは誰にだってあるものだ。