第16章 力の使い方
報告書は谷崎さんが受け持って下さるということで、書類にサインだけして急いで椚ヶ丘へ移動…したのはいいのだけれど。
『………何これ?どういう状況?』
「…まあ、色々とありまして……って白石!?」
「えっ、蝶ちゃん!!?足どうしたの!?」
『あ、足はもう治ったからいいんだけど…そんな事よりこの状況でしょ、なんで皆して“こんなところ”に?』
椚ヶ丘へ移動したのは良かった。
しかし校舎には誰もおらず、職員室を覗いてみるとそこには頭を抱えた烏間先生が机に向かってため息を吐いていたのだ。
そして今の皆の居場所を聞いてみたところ、なんと私も知っている場所にたどり着いてしまったのだが。
『ここって松方さんの所じゃ…』
「え、蝶ちゃん知ってるの!?何で!?」
そう、たどり着いた先は、少しだけ知っている仲の松方さんが経営している保育施設兼学童施設。
大したことではない上に恐らく松方さんの事を私が一方的に覚えているだけではあるだろうが、それでも少しは縁のある場所だ。
『大した事じゃないから…で、烏間先生に聞いた話ではここで働く事になったって聞いたんだけどさ?働くのは別に構わないけど…私あんまり細かい事の経緯を聞けてないのよね。烏間先生も忙しそうだったし』
それを口にするとゔっ、と声を漏らす皆。
ああ、なんかだいたい分かったような気がする。
「……朝から、フリーランニングの練習がてら…屋根の上を移動して登校してたら、歩道に着地する時に松方さんと接触を」
『成程、そういう事…よりによってここかあ、大変だねえ。今ここにいない子達は小さい子達の相手をしてるように見えるけど…ごめん、私あんまり小さい子達の相手は得意じゃないから、裏方作業に回らせて』
「白石、お前いい奴だなぁ本当面目ない!!…って子供嫌いなのか?てっきり可愛がってそうなもんかと思ってたんだが」
『子供は嫌いじゃないよ。でもほら、あんまり私、職業柄的にも生活的にもあんまり小さい子の前には出ない方がいいような人間だから』
元ポートマフィアの幹部格だし。
武装探偵社だって荒事ばかりで、ついさっきだって…正直に言って、この世界においては教育に悪い存在なのだ。
それに、普通の子供の純粋な眼差しや笑顔は、私には少し眩しすぎる。
子供という存在に対して複雑な思いを交錯させつつも、裏方業務に加わらせてもらった。