第16章 力の使い方
『あと一件…一件……!!』
「ち、蝶ちゃんちょっと早…っ、な、なんで今日こんなにペース早いの!?」
『五件も入ってたんですよ!?もう授業始まってるじゃないですか!テスト近いのに下らない事する人達のために時間なんか割いてる暇無いですよ!!』
「す、すごい言いよう…ていうか頭良いのに本当真面目だよねぇ。うちのナオミにも見習ってほしいくらいだよ」
谷崎さんと朝から討伐依頼というか捕縛依頼というか…とりあえずはまあ私が特に専門としている類の依頼を片付けていた。
今日の分の量が多すぎて仕事が回らないかもという話をたまたま小耳に挟んだので、急遽私が朝からこの手の依頼だけを引き受けたのだ。
最後に残しておいたのは密輸グループの捕縛任務。
場所はもう見当がついているため、後はとっとと片付けるだけだ。
入りますよと合図してから、目的の倉庫の鍵を外から外して中に入る。
するとやはりそこは血の気の多そうな人たちの集まりがあって。
「おお?可愛いお嬢ちゃん、どうやって入ってきたんだいこんなところに?」
口調とは裏腹に明らかに殺意と共に武器をこちらに向ける人達。
しかしそんな人達の中の何人かがざわつき始める。
「ま、待て!こいつの顔知ってるぞ…ッ、武装探偵社の白石だろ!!?なんでこんなところに!!」
「なッ!!?」
『あれ、バレたんだ。じゃあ説明省かせてもらいますね!貴方達よろしくないことしてらしたようなんで、ここらでちょっと痛い目見てくださいって事です!』
「「「簡潔にどうもありがとうございます…っ!!!!」」」
ニコリと微笑んでから瞬時に全員に攻撃を加えれば、断末魔のようなお礼の言葉が叫ばれた。
うんうん、武装探偵社ってだけで横浜じゃあもう敵に回したら降参するしかないっていうことが知れ渡ってるから、楽なものだ。
「…蝶ちゃん?この人数どうやって倒したの?」
『反撃の意志が無さそうだったんで、一発ずつ手とか足とかで攻撃を入れてとりあえず動けないように「そりゃあ意識も遠くなるよ!!なんで武器とか能力とか使わなくてそんなに優秀なのかな!?えらいえらい!!」最終的に褒めてくれるんだね、流石谷崎さん』
えへへーと笑えばなでこなでことよしよしされて、更に私の機嫌は上がる。
外からはもう、パトカーのサイレンの音が鳴り響いていた。