第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
中也さんに、嫌だ、なんて言ってしまった。
本当は来てくれて嬉しかったくせに。
会えて喜んでるくせに。
話しかけてもらえて、安心してるくせに。
『だってほら、こんな情けないとこ…見せたくないじゃないですか』
「情けない?お前の何が情けねえんだよ。本来なら自分だけでテレポートでもして安全を確保してたってよかったところを、芥川を助けた上に、港を危険から守ったんだ。大したもんじゃねえか」
何で中也さんがそこまで知ってるのかと思ったが、恐らく首領の事だ、説明する時に話したんだろう。
『それでも結局、こうやってバテちゃってます。それにまだ、注射にだって慣れません』
声が震えるのを何とか我慢して、淡々と話す。
「それの何がかっこ悪い。人間、一つや二つ、怖いものがあってもいいだろ」
確かにそうだ。
しかし、肝心なのはそこじゃない。
『…中也さんにも怖いもの、あるんですか?』
弱音を吐かないでいいように、話を続けてもらう。
興味本位で聞いたこの質問だったが、予想だにしない返答が返ってきた。
「そりゃ勿論ある。…いや、そんな堂々と言うようなものでもねえかもなんだが。」
驚いた。
あんなに強い中也さんにも、怖いものなんてあったんだ。
私何にも分かってないんだな、中也さんのこと…
「俺は、お前がいなくなるのが一番怖ぇ。俺の隣からいなくなられると…今みてえに死にそうに弱りきって、すぐにでもどこかに消えてしまいそうなお前を見るのが、怖くて怖くて仕方がねえ」
『え、わ…たし、?』
「ああ、お前だ。」
私がいなくなるのが、怖い?
そうだ、朝だってそれで焦ってた。
『私、中也さんの隣にいていいの…?こんなに弱いのに』
「お前には隣にいてもらわねえと俺が困る。お前が一人じゃ弱いことなんて分かってるさ、だから俺が居るんだろが」
なんだ、中也さんは知ってたんだ。
私がそんなに強い人間なんかじゃないってこと。
『……中也さんの血がないと死んじゃうかもしれないような子だよ?それで中也さんの足を引っ張っちゃうような子なんだよ?』
「おいおい、死ぬとか怖えこと言うなよ、勘弁してくれ。つかお前、まさか俺がお前に血をやるのが迷惑かけてるとか考えてんのか?」
不思議だ。
中也さんと話してたら、本当に嘘がつけなくなる。
『ん、…』
控えめに返事をして頷いた。