第15章 大切な人

「入るぞ、蝶～…ほら、プリン買ってきたから食わねえか？」

『ｯ！！…た、ちはら……さん？』

「その呼び方やめろ、鳥肌立つわ」

突然医務室に入ってきたのは立原だった。
さんを付けるのはいけなかったらしい…けど、付けちゃダメってどうしてだろう。

『どうして？…いつもは様って付けな……きゃ……っ！！！』

「様？…っておいおい、どうしたよ？酷い汗かいてんぞお前『やｯ！！！…っ、何でもない！！！』そ、そうか、分かった分かった、とりあえずタオルか何か…を……って、うお！！？」

腕を引っ張って寝台に押し倒すような形で、彼の上に跨るように覆い被さる。
顔を近づけてから目は背けたまま、“いつもの”ごめんなさいをする。

『…っ、ごめ、んなさい……いい子になる、にはどうしたらいい…ですか…』

「は！？何言ってんだ！！？とりあえず降りろ！！何も悪い事なんかしてな『ふ…ｯぅﾝ……っ』ってなんでんな声出してんだよ！！？」

『ぁ……ごめんなさ…ｯ………お、兄様…』

「！！！…何つった今」

『あ……れ、？…立、原…様……？』

「……俺を誰かと一緒にすんな。少なくとも俺は蝶にんな事無理矢理言わせはしねえ」

立原の言葉に目を見開いてそちらを見た。
すると彼も目を丸くし、それから私に言い聞かせるように言う。

「様付けなんかする程他人じゃねえだろ、俺ら…親友様々になんで様付けなんざするんだっつの。俺横浜の友達第一号だろうが」

『…親友様？』

「……そこは気にするんじゃねえよ！！！」

『は、はい………どうしたら赦してもらえ…ます、か』

「…………蝶よォ…それ、本気で言ってるとして、今ここで俺が仮に無茶ぶりしたらお前は素直に言う事聞いちまうのか？」

立原の声にｺｸﾘとすんなり頷いた。
素直なのはいいことだって、ちゃんと言う事聞けるのはいい子だけだって、教えられたから。

体がそう動くようになっている。

「中原幹部を裏切るような事でもか？」

『………言う事聞かなきゃ、ダメだから』

「なら、もし俺が今すぐこの場で服でも脱げっつったら本気で……って蝶！！？おい、待て今のは本気で言ったんじゃ……っやめろって！！！」

無理矢理服を掴まれて、下着が見えたところあたりで止められた。

「こういう事は言う事聞いちゃいけねえんだよ！！！……っ、お前、中原さんがいるだろ！！？」