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第15章 大切な人


翌朝の事。
ベッドの上で目が覚めると、隣には中也がいない…と思うのはいつの間に習慣になってしまっていたのだろうか。

『………し、心臓に悪いこれ…ッきゃ……!?』

目の前には綺麗な綺麗な中也の寝顔……があったはずなのだけれど、一変してニヤリと笑みを浮かべた彼は、待っていましたと言わんばかりに私を強く抱きしめる。

「やっと起きた…はよ」

『お、はよござい、ます……じゃなくて!!び、びっくりするからやめ「俺だってここ数日仕事詰めでお前が不足してんだよ、許せ」…あ、ぅ……』

朝から心臓に悪すぎる。
中也の声はやはり今日になっても大人の色気というか魅力というか…そういったものをにおわせる。

そんな声を耳元で出されれば、誰だって恥ずかしくもなるでしょう?

「お前自分から来る分にはいいのに俺に言われてとか俺からってなるとほんと弱ぇよな」

『…近い』

「いつももっと近いだろうが」

『………は、ずかしい…』

「…そういう事すっから余計したくなるんだが」

中也の髪が頬に当たって擽ったい。
それと同時に反対側の頬を撫でられ、その手は私の髪を耳に掛けてそのまま耳を触り始める。

絶対わざとだ、間違いない。

『あ、の…ッ……手…』

「手が何だよ、昨日みたいに自分からいい事してくれたら何でも言う事聞いてやれそうな気がするんだが」

『!?あ、朝から何ッ、を……ッッ!!ちょ、っ待って、ダメッ…やだぁ…あッ…』

スリスリと指で耳から首にかけて優しめに撫でられ、それだけにも身を捩る程の刺激になるのにも関わらず、容赦なく中也はもう片方の手を下へ伸ばして私の太股にサラリと触れる。

ビクンビクンと腰まで跳ねさせればさも嬉しそうな顔をして、中也はその動きをやめずにまた私に話しかける。

「朝からも何も、俺真面目に今やべえんだわ…お前、脚は」

『あ、脚!?痛くないから多分もう治っ……ッ!!やっ、そ、れ撫でちゃ……ッ!!』

「待てよ、ギブス外してるだけだろ……っと、外れた。痛みは」

『な、無いッ!!無いけど朝からダメ!!学校が「今日日曜だろうが」!!!』

そうだ、昨日は体育祭が土曜日だった。
つまりは今日は日曜日で、中也も恐らくこの様子だとお仕事が休みになっていて…

ギブスと一緒に布団まで剥ぎ取られてしまい、そのまままた中也が覆いかぶさってくる。
何か、様子が変…?
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