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第15章 大切な人


『…ち、中也さ……中也…?あの、髪…何かおかしい?』

「いや?いつも通り惚れ惚れするくらいには綺麗だが」

『も、もうそういうのいいから……っ、何…?』

「何って…鏡見てみろ」

中也さんに手鏡を手渡されて弄られていた髪を見てみれば、普段と同じサイドアップの部分に蝶の飾りが付いていた。
私の目の色と似たような、まるで遊色効果をもつ黒オパールのような…

キラキラしているように見えるのに表面は艶やかで、見ていて心地のいい蝶の飾り…

『…!ち、中也、これ……「あとこれも」!?』

次に渡されたのは細でのブレスレットだった。
こちらにも小さな蝶のチャームが付いていて、小さいパールや宝石が他にも数箇所付いており、なんともまあ私好みにも程がある大人しくて少し気品の感じられるようなデザイン。

「お前何回聞いても俺といたいとか俺がいいとかしか言わねえからな。無理に身につけろとは言わねえが、まあお前も女だしあんまりこういう類のもんは持ってなかったなと思っ……蝶…?」

『………私、頭に黒色の蝶々ずっと乗せてた…ううん、つけてたの。…こ、これ本当に貰っていいの……?本当に私がこんなの貰っちゃって…』

「いいも何もお前に買ってきたんだよ、他の誰に俺がわざわざこんなもん探して贈るんだ?ああ?」

『そ、っか……えへへ、こんなの貰ったのいつぶりだろ…こっちのおっきい方は中原さんで、こっちのちっちゃい方は中也さんって名前にするね!』

「おい待て、何だそのネーミング。第一なんで蝶に名前なんか付けんだよ」

『特別な蝶々には名前付けるの!』

アクセサリーなのにか?と聞かれるけれど、それでもいいのと笑顔で返す。
懐かしい遊びだ、子供の頃にこうして遊んではしゃいでた。

『一生大事にするね、中也さん!』

「…中也さんはブレスレットじゃねえのかよ」

『あ、そうだ。中也だ』

「ややこしくねえかこれ!?」

緩んで引き締まらなくなった顔を中也に向け続けていれば最終的に向こうが折れてくれて、分かったよと渋々了承してくれた。

「くそ…照れる」

『嬉しかったら撫でて撫でて♪』

「……」

無言で再び撫でられ始めた。
結局嬉しいんだ、こういう時って本当、何も言わないのに素直だよねこの人。

『じゃあ私も、お礼に面白いの見せてあげる』

「面白いもん…?」

思わず口角が上がった気がした。
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