第15章 大切な人

中也さんに前髪を少し掻き分けられ、そこに一度短く口付けられて身体が強ばる。

なんでだろ、数日一緒にいなかっただけでなんでこんなに恥ずかしいの。
なんで……こんなにドキドキするの。

「ほら、力んでんじゃねえよ。そんなに力入ってっと俺またお前に欲情しちまうだろうが」

『な、なんで…っ』

「見てて可愛いから」

『！！？…い、今そういう事言わな、っで…』

「……可愛いぞ蝶」

『ひぁ…ｯ！！だから、ッ…「そういう初な反応も、恥ずかしがってんのも可愛い」や、やあ…っ、ち、中也さんやめ……ｯ』

＿＿＿＿俺の事意識しすぎて女になってる蝶が本当に可愛い

中也さんの囁きにとどめを刺されたようにぶわっと恥ずかしさから涙目になった。
全部バレてる、全部見抜かれてる。

「そういう反応すっから余計いじめたくなるんだよお前」

『だって中也さんが…ｯ、中也さんがぁ…！』

「………やっぱり蝶、その中也さん呼びやめようか」

『！…へ……？』

「俺達一応恋人だろ？それでいいんだよな？なら俺も呼び捨てで呼ばれていいはずだ…ちゃんと呼べたらキスしてやるよ♪」

かあああっと顔が更に真っ赤になったような気がした。
分かっててこういうことするからずるい…中也さんの事中也って呼ぶなんてそんな……

「昼間人の事ケチだなんだっつってた時には呼んでたくせになァ？」

『！！…ぁ……ゆ、び嫌…ｯ、指やだ……あ…ｯ』

ﾌﾆﾌﾆと唇を指で触られるも、唇で触れてくれそうな気配は無い。

「！……っと…ははっ、だめだろ？ちゃんと言ってねえのに無理矢理しようとしたら｣

意地になってこちら側からしようとすれば、流石というかなんというか、顔を少し離されて避けられた。

酷い…催淫剤のせいで身体おかしくなって、全部我慢してお願いしてるのに。
キスぐらい、してくれたっていいじゃない。

『中也さ、ん意地悪…ｯ、指じゃ嫌ぁ…っ』

「中也さんじゃねえだろ？言えたらしてやるって」

『……っち、ちゅう…や…………さん』

「なんでそんなに付けてえんだよお前…？」

一向にしてくれそうな気配はない。

仕方ないじゃない、記憶なくなってから中也さん前よりなんか大人っぽくなってるし、今日なんか変に優しいし…

『…い、いいじゃん……し、てよ…………ちゅうや…ｯｯﾝ……っ』

遠慮がちに言った声は届いていた。